[官能小説レビュー]

“キレイなもの”であるはずが「醜く異様な行為」に変わる、童話のエロスと狂気

ittemitaina
『行ってみたいな、童謡(よそ)の国』(河出書房新社)

 子どもの頃はもちろん、大人になってからも、ページをめくるたびに幸せな気持ちに浸れる童話の世界だが、それも解釈を変えるだけで非常にグロテスクかつ官能的な物語に変貌する。

 今回ご紹介する『行ってみたいな、童話(よそ)の国』(河出書房新社)は、長野まゆみ氏による不道徳な3作品の童話が収録されている。「にんじん」「ピノッキオ」「ハンメルンの笛吹き」というタイトルを聞けば、何となくその世界観が脳内で映像化される作品だが、長野氏が描く童話の世界は気味悪く、いやらしい。中でも、魂を持つ木製の人形が主人公の「ピノッキオ」は、メルヘンチックな内容とは裏腹に、長野氏のフィルターにかけられ、狂気とエロスに満ちた作品に仕上がっている。

 もともと小さな木の果(み)であったピノは、森の中でいちばん美しい白樺の木に育てられていた。白樺の幹に寄り添い、その樹液をもらって成長していた。ある日、ピノは2人連れの男たちに切り落とされて森を去ることになる。道端に捨てられたピノは大工の親方に拾われ、ジュゼッペ爺さんの手により人形に作り変えられる。

 人形となり、魂を持ったピノは街に出て、白樺の樹液を求め徘徊する。目や鼻はもちろん、口から飲んだ水を排泄する穴まで付いているというおかしな体のピノに興味を持ったあらゆる人々は、ピノを性的な玩具として弄ぶ。「樹液が出る」と嘘をついて性器をくわえさせる大人や少年たちは、ピノが彼らの「樹液」を飲み干すと、下の穴からそれを垂れ流す様子を見て嘲笑をする――一字一句読み進めるたびに気が滅入ってくるような、つらい描写が容赦なく書かれている。

 無邪気な暴力性を孕んだ3作品は、幼い少年や少女の危うさを的確に表現している。セックスもまた美しさと醜さは表裏一体で、一見「愛の表現」とキレイに表現されがちだが、互いの性器を貪り合い、奇声を上げて交わるという、醜く異様な行為に感じる人もいるだろう。

 この本は、私たちが「キレイなもの」と信じていたものをひっくり返された時のような、下半身がむず痒くなる官能に満ち溢れている。
(いしいのりえ)

最終更新:2017/08/14 19:00
行ってみたいな、童話(よそ)の国 (河出文庫)
食欲がなくなってやせそう……

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