[ドラマで気になるアノ男]

「大人になった少年たち」はどう生きるべきか? 『未満都市』俳優としてのKinKi Kids

2017/07/24 21:00

大人になった少年たちが身につけたもの

 本作には現在、嵐で活躍する松本潤と相葉雅紀も出演していたのだが、かつての仲間たちとの再会は同窓会的で感慨深い。また、幕原と殺人ウィルスに、いろいろなことを重ねているのも興味深かった。

 前作では、1995年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が作品に重ねられていたが、2017年版では前作のウィルス事件が11年の東日本大震災と福島の原発事故に重ねられており、その悲劇が政治利用されている。向井理が演じる政府の役人は「幕原復興は国家の意思です。再開発を止めるということは、すなわち日本という国の成長を止めることです」「これは国策なのだ。誰もが早く忘れて前に進もうとしているのに、そうやって復興に水を差して、誰が幸せになると思ってるんですか?」と言い、復興のシンボルとなる図書館の建設に、20年の東京オリンピックを重ねているのも、うまい作りだと言える。

 20年前に「大人になることを禁じられた少年たちの戦い」を描いた本作が、今回描いたのは「大人になった少年たちは、どう生きるべきか?」というテーマだ。

 大人になったヤマトたちは、仕事も生活もあって、かつてのように自由に振る舞うことができない。だが、自分たちの志を貫く、大人としての巧みな知識と話術を身に着けている。これは、弁護士となったタケルが体現している。また、教師のヤマトが生徒たちに語りかけることで、ネットゲームで知り合った子どもたちが味方となり、地下の汚染水をヤマトに代わって取りに行く場面は、本作の見せ場となった。巧みな話術と次世代への継承。かつての少年たちは、あの頃よりもズルくて、計算高い大人になったかもしれないが、だからこそ、自分たちにとって一番大事なものを守れる強さを手に入れたのだ。

 そんなヤマトとタケルの姿と、大人になった今もアイドルとして活動するKinKi Kidsの姿が重なる。

 ヤマトとタケルと同じく、光一と剛も現在38歳で、真逆のアプローチではあるが、2人は今もアイドルで居続けている。光一は、よりシャープな顔立ちとなり、正統派ジャニーズアイドルの王道を歩んでいる。今後は年齢を超越した王子様的存在となっていくのではないかと思う。対して剛は、いい意味で面白いおじさんになりつつある。

 『人間・失格~たとえば僕が死んだなら~』(TBS系)のようなシリアスなドラマと、『33分探偵』(フジテレビ系)のようなコメディドラマの両極を往復してきた剛だが、本作のタケルの演技が良かったのは、シリアスとコメディがうまく混ざり合っていたことだ。それでいて、熱血感のヤマトを鎮めるクールでとぼけたツッコミキャラだというのも面白い。

 実は2人が共演したのも、『未満都市』以降20年ぶりなのだが、ヤマトとタケルの掛け合いは、バラエティ番組等で見せる実際の2人のやりとりに近い。円熟した夫婦のようなやりとりを見ていると、もっと2人がイチャイチャする姿を見たいと思った。今回のドラマは一種のバディモノだったのだが、例えば2人が探偵コンビとして事件を解決するドラマなど、どうだろうか。

 劇中では20年後に再び続編を作ることを匂わせていたが、20年後と言わず、早く2人の共演作が見たいものである。
(成馬零一)

最終更新:2017/07/24 21:00
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