小林麻央さんの死に対して、感情移入する人とできない人の心理とは?

2017/07/04 21:00

世間のムードに違和感を覚えてしまう人も

 一方、麻央さんの死に感情移入できず、逆に世間のムードに違和感を覚えてしまう人もいる。それは、いったいどういう心理なのだろうか? 

「そもそも、最初からそれほどこのニュースに関心を持っていなければ感情移入しません。また、ニュースを追っていたとしても、過剰にプライベートが公開されていると感じたり、ほかにも頑張っている患者さんが多数いるにもかかわらず、なぜ特定のこのケースだけがメディアに取り上げられるのか疑問に思えば、感情移入がブロックされる場合もあります。

 当然のことながら、人は多様ですし、感情移入の仕方自体にも大きな個人差があります。ですから結局のところ、感情移入できるできない、違和感を抱く抱かないの違いを示す、明確なただひとつの答えはないと言わざるを得ません。ただ、自分と環境が似ている人に対しては感情移入しやすいので、たとえば麻央さんと同じように姉妹を持つ人などは、強い思いを抱くかもしれません。

 今回のケースは、家族や近しい人の死を悲しめない、ということとは全く異なります。このニュースに感情移入できなくても、『自分は冷たくてドライな人間だ』などと思う必要はありません」

 先日、海老蔵が麻央さんのブログを英訳すると発表。英訳版には英語のコメントも書き込まれ始めた。今後、悲しいムードが世界的なものになっていくかどうかはわからないが、ネットに麻央さんへの思いを書き込む人と、この件に関して感情移入できない人、どちらも決して批判されるべきものではないだろう。
(C.FUJII)

唐沢かおり(からさわ・かおり)
社会的認知を専門とする社会心理学者。University of California, Los Angeles(Ph.D)、京都大学大学院文学研究科博士後期課程、名古屋大学大学院環境学研究科助教授などを経て2010年より東京大学大学院人文社会系研究科教授。『なぜ心を読みすぎるのか みきわめと対人関係の心理学』(東京大学出版会)ほか著作多数。

最終更新:2017/07/04 21:00
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