知られざる女子刑務所ライフ13

あの「バブルの女帝」を獄中で介護してました――老人ホーム化する刑務所事情

2017/06/02 16:00

“バブルの女帝”尾上縫さんの思い出

 そして、もちろん私も担当しましたよ、介護(ちょっと自慢)。若い人はご存じないでしょうが、大阪・ミナミにあった料亭「恵川」のおかみさんだった尾上縫(おのうえ・ぬい)さんの介護を長く担当していました。

 80年代不動産バブルも今は昔となりましたが、当時の尾上さんは料亭や雀荘の経営の傍ら株で稼ぎ、「北浜の天才相場師」と言われてました。占いで株の値動きを予想して、「NTT株が上がるぞよー!」というとホンマに上がったとかで、銀行関係者など「信者」もたくさんおられたそうです。

 もちろんバブル崩壊で大損されるわけですが、銀行を騙したとして、まさかの「巨額詐欺事件」に発展します。銀行からの借り入れは約2兆8000億円だったそうですが、フツー料亭のおかみさんに、そんなに貸しますかねえ。縫さんもよくはないけど、やっぱり銀行が悪いと思いますよ。

 ネット情報によりますと、獄中で破産手続きをされた時は、負債総額4300億円で、個人としては史上最高額だそうです。そして、「懲役12年」の判決が確定したのは21世紀になってからで、2003年4月でした。いかんせん被害額がハンパないので、調べることもようけあったからでしょうが、1930年生まれですから、当時もう73歳ですよ。そこから12年て、ため息が出ますよね。私がお世話をさせていただいた頃は、もうお一人では何もできない状態でした。ずっと一緒だったこともあり、私は縫さんが好きでしたね。「養女においで」とも言われました。

 縫さんは、元気な時には毎晩拝んでおられました。そして、私の肩をたたいて「ミーサンが降りてきはったで。ちゃんと守ってもらうように言うたから、安心しいや」と言ってくれました。ミーサンとは「巳さん」で、蛇の神様ですね。「三輪そうめん」で有名な奈良の大神(おおみわ)神社などにおまつりされています。関西ではメジャーだと思うんですが、ご存じでしょうか。

 初犯ですから仮釈放もあったようで、ひっそりと出所されて14年頃に亡くならはったそうです。思い出して、また会いたくなりました。合掌。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

最終更新:2022/10/14 17:54
女帝―小説・尾上縫
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