[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」4月25日号

「婦人公論」で始まった鈴木保奈美のエッセー、80年代引きずりまくりの文体の時代錯誤感

2017/04/19 21:00

「はて、ギャップモエ? モエって?」という凍りそうな一文

「そんなことおくびにも出しませぬ。アンニュイな大人ですからね」

「どうやら彼は私のイデタチから、ワイルドで男前な孤高のアーティスト、みたいな人物像を想像しているのではあるまいか」

「はて、ギャップモエ? モエって?」

「いえね、あたくし普段お仕事用にはシンプルなシルバーのボトルを携帯しているのですよ」

「若者よ、君のひと言でお姉さんのホルモン値は確実に刺激されたよ」

 この不必要なまでのカタカナ表記、誰に語りかけているのかよくわからない口語体、これぞ80年代カルチャー、いや“軽チャー”。まさか鈴木のコラムから、あの時代の無責任感を追体験する日がくるとは。清水の鼎談の初回ゲストとして登場するYOUの「ぶっちゃけた私」なんて、鈴木のトレンディ力に比べたら風前の灯ですわ。

 長く続く雑誌は、上手に世代交代ができているもの。老後や終活話はまだまだ現実味がない世代を少しずつこちらの世界に引き込む、謎のカタカナが散りばめられた鈴木保奈美の連載がバブル世代の撒き餌のように思えてくるのです。

(西澤千央)

最終更新:2017/04/19 21:00
婦人公論 2017年 4/25 号 [雑誌]
まだ自分にトレンディな価値があると思っている保奈美の自己肯定感を見習いたい
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