[サイジョの本棚]

「ちゃんとした料理を作らなきゃ」「ていねいに暮らさなきゃ」、“料理”に自分で呪いをかけてない?

 春は、一人暮らしを始める人が多い季節。それまで日常的に家事をしていなかった人ほど、料理や掃除を伴う初めての「生活」に戸惑い、早々に疲れてしまうだろう。今回紹介する「台所」に焦点を当てた日米の2冊は、そんな新生活にストレスを感じている人、そして、自分は「料理が苦手」だと思っている人に読んでほしいノンフィクションやエッセイだ。

■『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン著、村井理子訳、きこ書房)

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 『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』は、タイトルだけ見ると、“料理ができない女=ダメ女”と、本に叱られそうで敬遠してしまう人もいるかもしれない。本書は、むしろ、そんな女性に寄り添い、パワフルに力づけてくれるノンフィクションだ。

 世界的に有名な料理学校「ル・コルドン・ブルー」を37歳で卒業した著者が、料理に苦手意識がある「普通の女性」10人に料理の基礎を教えることで、彼女らのキッチンや食生活がどう変わったかをリポートした本書。彼女らを「ダメ女」と呼ぶのは、著者ではなく、「料理ができない」ことがコンプレックスになっている生徒たち自身だ。生徒は、20代から60代までの女性。一人暮らしで自炊は難しいと思っている女性、子どもを持つワーキングマザー、経済的に困窮して自炊の必要性を感じ始めた弁護士など、立場や事情はそれぞれ違うが、料理に苦手意識を抱えている。

 包丁の使い方、基本的な肉・魚・卵料理、パスタソースの作り方や簡単なパンの焼き方、残り物でさっと料理をするコツ。そんなシンプルな技術を学ぶことで、彼女らは、自らが「料理をする」というハードルを、無駄に高くしていたことに気づく。出来合いで済ませているパスタソースやドレッシングを手作りすることは、「すっごく難しいこと」なのか。生徒たちは、学べば学ぶほど「知っていたら絶対自分で作る」「こんなに簡単なの?」と口にする。

 さらに著者は、レッスンを通して、料理を作れない人が増えている背景や、インスタント食品やファストフードの普及がもたらした現代人の健康被害、米国の「食」をめぐる社会問題に触れる。本書では、外食やレトルト食品のデメリットも語るが、「絶対に使うな」という立場ではない。「何から何まで手作りしなければダメだなんて、うそっぱちだよ。(略)インスタントのツナキャセロールと、“トップ・シェフ”の間に、あなたにとって心地よい場所を見つければいい」と、選択肢を広げることの重要性を説く。多忙な育児や仕事の合間に、数時間かかるような料理を作ることは難しい。けれども、買い物に出るよりも短い時間で、外食より安く簡単な食事が作れるのに、「方法を知らない」というだけでインスタント食品に手を伸ばす人が多いことに警鐘を鳴らすのだ。

 終盤では、10人の生徒の“その後の台所の様子”を追う。全員が日常的に台所に立つようになり、食への意識を大きく変えていた。生徒の1人、母親の影響で「料理なんて自分にできるはずがない」と思っていた61歳の精神科医は、自宅を訪ねてきた著者に語る。

「まさか私があんなに美しいものを作れるなんて。自分だって信じられなかった。私の年齢でも、変わることができるなんてすばらしいことだわ。この年になっても、自分を驚かせることができるのよ」

 “料理ができない女=ダメ女”ではない。けれども、料理の技術は、人生の質を確実に上げてくれる手段のひとつだ。そして、料理に限らず「できないと決めつけていたこと」が簡単にできるようになる体験は、何歳になっても、その人に新たな自信を与えてくれる。料理が苦手だと思っている人にとって、本書は料理の基礎を教えてくれる実用書であり、かつその苦手意識を自信に変えてくれる本になるだろう。

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