「オナニーしてるコはキモい」の呪縛から解き放った「今からオナニーしてくる!」というカッコよすぎる宣言

2017/04/15 20:00

「ねぇ、オナニーって知ってる?」

小学五年生のある日、突然、親友ユリナが聞いてきた。
彼女は全校で五本の指に入る美少女で人気者だった。

「何やそれ?」

すっとぼけたわけじゃない。
オナニーとは5歳からの付き合いだったが、「オナニー」という言葉を知らなかったのだ。

「なんか、アソコを自分で触ることだよ」

ユリナが言う。

「へっ、へ~」

それなら毎日やってるよ、という言葉は飲みこんで何も知らないふりをした。

次の瞬間、ユリナは冷たく言い放った。

「◯組のKさんが、オナニーしてるらしいよ。キモいよね」

えっ……

私は黙るしかなかった。イヤらしすぎる情報をいきなりブッコまれて呆気に取られているとか、「Kさんに引いてキモがっているゆえの沈黙」とユリナには受け取られたかもしれない。

オナニーってやっぱりイケナイことなの?
あんなに気持ちいいのに?

まんこを触ると気持ちいいってことは、何やら秘密にした方がいいとは薄々気づいていたが、それが確信に変わった瞬間だった。

確かに家でこたつの脚に股間をコスりつけていると母から「まーちゃん、やめなさいっ!」と止められたし、「オマンコ」という単語も口に出すたび「そんな言葉使っちゃダメ!」と叱られたけれど、友達ともそういう話をしてはいけないんだ。

ユリナは大親友で、何でも話せる仲だったがオナニーのことは黙っていようと決めた。
ユリナに嫌われたくない。軽蔑されたくない。

一方、オナニーをしている宣言を堂々としたKさんは、どこか学校で浮く存在になっていた。以前は沢山の友人に囲まれていたのに。

月日は流れ、大人になった現在、私は「まんこ」とか「初オナニーは5歳」等、堂々とエッセイに書いている。

5歳からの付き合いであるオナニーをひた隠しにしてきた私を変えたのは、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在中、シェアメイトで仲良くなったナツコの存在だった。

彼女は夜中に突然

「ああっ、急にオナニーしたくなってきた! してこよう!」

と叫んだ。

目を点にしている私ともう一人のシェアメイトのケイコに

「えっ何でそんな驚くの? オナニーするでしょ」

と言い放ち、ナツコは自室にオナニーをしに行った。

海外育ちが長い彼女だが、それにしてもハッキリ堂々としていて、ものすごくかっこよく見えたのだ。

ナツコのオナニー宣言を聞いて、私は10年ぶりにKさんを思い出した。
Kさんは、今さらだけどヒーローのような存在に思えた。

私も偽りなく生きよう。

帰国後、ユリナに会った。小学校から現在に至るまで、ユリナは私のかけがえのない親友だ。
土産話のついでを装って、ユリナに「実は私はオナニーしている」と打ち明けた後、聞いてみた。

「ユリナもオナニーするでしょう?」

「……うん…」

恥ずかしそうにユリナは答えた。

オナニーは、気持ち悪いことじゃない。
だから堂々と胸を張ってオナニーしよう!

■緑丘まこ
兵庫県育ちのアラサー女。
漫画とゲームとオナニーをこよなく愛する。
センベロ居酒屋やレトロなレストランを発掘するのが休日の楽しみである。

最終更新:2017/04/15 20:00
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