仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

渡辺直美、“肥満”を武器にする芸風に「女の生きづらさ」を感じてしまうワケ

2017/03/23 21:00

 渡辺のインスタを実際に見てみると、随所にぽっちゃりアピールがなされていることに気付く。例えば、犬の画像には「(犬を抱く)二の腕ターキー一羽分の大きさ」、水着でビーチに寝そべった画像には「トドじゃない」といった具合のコメントを添えている。笑いを挟んで、モデルとは差別化を図っているという見方もできるだろうが、私には「リア充に見えるかもしれませんが、太っています」というふうに、あえて自分から軽んじられる方向に導いたからこそ、「ぽっちゃりだから、日本一」を達成したように見える。

 同番組で恋愛事情を聞かれた渡辺は、「29年間彼氏なし。全部行きずり。逆にすごくないですか?」と告白して、MCのダウンタウンや坂上忍を笑わせた。「どうしたらちゃんと彼氏ができますか?」でなく「逆にすごくないですか?」と考えるのが、渡辺らしいと思う。というのは、渡辺のインスタは水着姿や扇情的な表情をしたものが多い。太っているオンナ芸人の対極にあると勝手に決めつけられてきた“性的なもの”を前に出し、それが多くの“いいね!”を獲得することを“新しい”と捉える人がいる一方、私には「太っているオンナは性的魅力が少ないに違いない」という一般的な思い込みを“逆に”利用して、「だから、セクシーを前面に押し出しても反感を買わない」と判断しているように感じられるのだ。

 テレビの世界は“役割”が決まっている世界だ。例えばバラエティ番組で、性的なことを語るよう求められるのは、細身のタレントやモデルだが、視聴者が“リア充”を嫌う今、彼女たちも当たり障りのないコメントしかできない。かといって、オンナ芸人が中途半端に口を挟めば、彼女たちのキャラも崩壊する。となると、性的なことを自由に発言できるのは、“規格外”の体を持つがゆえに、うまく視聴者に軽んじられることができる、渡辺のようなぽっちゃりオンナ芸人なのではないだろうか。

 隠れ蓑という言葉がある。着ると姿を隠すことができるという蓑だが、“太る”ということは、脂肪という名の隠れ蓑を手に入れることに等しいと思う。世間の目を気にせず、女性性を自由に謳歌するには、“ぽっちゃり”になることが最良なのではないだろうか。もしそうだとしたら、日本の女性が置かれている現在の環境が、どれだけ過酷かの証明ともいえるのではないだろうか。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2017/03/23 21:00
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