更年期予防と避妊目的でピルを服用、充実した性生活を送る亜希子さん50歳

2017/03/12 20:00

 結婚12年目の亜希子さん(50)は、15歳年上のご主人とふたり暮らし。2匹の猫が子供代わりだ。60歳でいったん仕事をリタイアしたご主人は、すぐに関連会社の役員として働くようになり、いまも忙しい日々を過ごしている。

 亜希子さんは20代の頃からピルを服用しており、ピルを飲むことで女性ホルモンが安定しているせいか、50歳のいまでも特に気になる更年期症状は出ていないという。「いまピルを飲んでいるのは、更年期予防と、あとは避妊のため」と屈託ない笑顔を見せる亜希子さんには、実はご主人以外にもふたりの彼氏がいて……。

籠の鳥状態だった7年間。15歳年上の夫による束縛

――恋愛結婚ということですが、ご夫婦でかなり年齢が離れていますよね。15歳も離れていると、もうなんでもワガママをきいてくれそうなイメージです。

「それってよく言われますけど(笑)。正直、ヤキモチや束縛はものすごいですよ、主人」

――え、そんなに年が離れていてもそうなるものですか。

「結婚を決めた時は、こんなに年が離れているんだから、きっとなんでも好きなように自由にさせてくれるだろうと思ってたんですよ、私も。でも年上の男は大らかとか包容力があるとか、あれって迷信です(笑)。まぁうちの主人の場合だけかもしれないけれど。とにかくヤキモチ焼きで束縛が激しいの。妻が自分より若い分、より一層そういう感情も濃くなるものなのかもしれませんね」

――束縛って、たとえば具体例を教えてもらってもいいですか。

「私、舞台鑑賞が趣味なんです。たとえば、お友達と舞台を観に行くとしますよね。その場合は、まず鑑賞前に『これから観ます』とメール、鑑賞後には『終わったから友達とご飯に行きます』とメール、食べ終わったらまたその報告と、小まめに連絡するのは当たり前。そこまでやっても、その日帰ったらもう主人は口もきかない」

――それはもしかして、すねちゃってる?

「そう、その通り。全身で怒ってることを表現しているってわけですね」

――でも舞台は女友達と観に行かれてるんですよね?

「もちろん女友達ですよ、主人もよく知っている人で。それでも、私が出かけるのがなんとなく面白くないんでしょうね。でも今は舞台鑑賞に行けるだけ良くて、とにかく、結婚して7年間は籠の鳥状態だったんですよ。さすがにこのままの人生じゃ辛いなと思って。私はもともと社交的なタイプでしたし、外に出かけたくって。それで結婚7年目で初めて主婦の友達と一泊旅行を決行したんだけど、そのときに主人からかかってきた電話の回数は7回」

――たった1泊で、電話が7回ですか!

「ね、年上の男は落ち着いていて包容力があるなんてあれ、嘘でしょ?(笑)その1泊旅行を決行して以来、少しずつ友達と外に出かけられるようになりましたけど」

――荒療治が功を奏したというわけですね。ところで束縛とヤキモチを辛いと感じてはいらっしゃるようですが……それでも結婚生活を続けていらっしゃるのはなぜでしょう?

「私、頭の悪い人が嫌いなんですよ。主人はとにかく頭がいい人で、それだけで絶対的に尊敬できる。たとえばね、昨年イギリスでEU離脱をめぐって住民投票があったでしょ? 最初、あのニュースについてよくわからなくって『なんでいま投票するの?』って主人に訊いたわけ。そしたら、ポンと答えが返ってくる。それもすごくわかりやすい説明で。うちの父がそういう人だったんだけど、早くに亡くしたから……もしかして知らず知らずに父と同じような人を求めていたのかもしれないなぁ」

――以前にこの連載でインタビューした女性も「夫を尊敬できるから、夫婦として成り立っている」というようなことをおっしゃっていました(由美子さん・54歳)。なるほどやはり<尊敬できる相手>というのは夫婦を長く続ける上で重要なポイントなのかもしれませんね。

「あと、もうひとつあります。うちの主人は、素直に謝ることができる人なんです。自分が間違っていたと思ったら、素直にごめんなさいを言ってくれる。その方法もちょっと可愛らしくってね。猫を抱いて『なんかママ怒ってるなぁ、許してくれないかなぁ』って、私に聞こえるように言うわけ。そういうことされると怒っていても、つい笑っちゃって。それで許しちゃう」

――亜希子さんのご主人は65歳でいらっしゃいますしね。その年代で素直に女性に謝れる人って、なかなかないような気がします。

「そうでしょ? そういう可愛い面もあるから、まぁやきもち焼きでもしょうがないかって」

尊敬する夫とは別枠の、ふたりの彼氏

 その一方で、亜希子さんには、精神的な繋がりを感じるAさん・肉体的に楽しむ相手であるBさん、ふたりの彼氏がいるという。

 独身時代から彼氏がいない時期がなかったというほどモテてきた亜希子さん。15年前にお母様を亡くされた際も、葬儀にかかった費用はその当時つきあっていたふたりの彼氏(前出のAさん・Bさん、そして現在の夫とも別の人物)が全額負担してくれたそうだ。

 そんな<男が途切れない女>である亜希子さんだが、結婚後もモテっぷりは変わらなかった。5年ほど前からつきあいが続いているAさん、そして会えば必ずセックスするBさんというふたりの彼氏と交際を続けている。どちらも既婚者だ。

――ふたりの彼氏のうち、まずはおつきあいが長いというAさんのお話からお尋ねしてもいいでしょうか?

「Aは元カレで私よりも3つ年上です。彼とはもう男と女の仲を超えているというか……。私の人生からいなくなることなんて考えられないぐらいの深い存在。なにも言葉を交わさずとも、お互いの考えていることがすべてわかるというかね、そういう人です」

――Aさんとは、いまもセックスされてるんですか?

「最近はないですね、めったに会うことはないから。向こうがとても忙しい人なので。メールでしょっちゅう連絡は取り合ってますけど。でもね、その彼とはもう精神的な繋がりが深いからセックスはなくってもいいの。それがなくてもつきあいはきっと一生続くと思います」

――とても大切に思われているようですが、その彼とご主人、どこがどう違うんでしょうか。

「強さかな。うちの主人と比べて、精神が強靭というか、肝が完全に座った男なんです。そこが主人とは違う。主人は彼に比べると普通の男。慌てるときは慌てるし」

――では亜希子さんと同じ年だというBさんはどんな方なんですか?

「Bとはね、完璧に男と女の関係だけを求めているような、そういう仲かなぁ」

――セックスがメイン?

「うん、会えば必ずセックスするから。そういうことになるのかな。この人も元カレでね、つきあってたのはお互いまだ10代の頃。若かった(笑)」

――Bさんとは別れたあとも、しょっちゅう会ってらっしゃったんですか?

「まさか(笑)。20代で別れてからはほとんど音沙汰なしの状態でした、お互いに」

――ではどうしてまた再燃したのでしょう?

「3年前の話になるんですけれど……SNSがきっかけなんです」

――でも結婚されて苗字が変わってるわけですよね、亜希子さん。Bさん、かなり一生懸命探したのかもしれませんね。

「共通の知り合いも多いし、探されちゃったんでしょうね。向こうから友達リクエストが来て、しょうがないから承認するじゃないですか。そうすると、お互い近所に住んでるってことがわかったの。そこからはもう『会おう、会おう』って怒涛のメール攻撃がきて……それで根負けして会っちゃったっていうわけ」

――会ってすぐに男女の仲に戻ってしまったんでしょうか。

「まぁそうなりますよね。そんなにHがしたいって言うんなら、もう仕方ないなぁって感じ」

――亜希子さん、求められると拒めないタイプなんですね(笑)。

「そうでもないんですけど(笑)。あと、彼と会ってしまうようになったのには、もうひとつ理由があるんです」

――理由というのは?

「ちょうどBが友達申請をしてきた3年前に、私の親友がガンになってしまったんですね。彼女のその告白を聞いてから辛くて辛くて。ある日、家にいたときに彼女のことをいろいろと考えていて……こらえきれずに泣いてしまったことがあったんです、主人の前で。泣いてる私を見て『彼女はもっとつらいんだから、おまえが泣いても仕方ないだろ』って言ったんです、主人が」

――たしかにそれは正論なんですけれど、いま私がほしいのはその言葉じゃないよっていう。

「そのときにね、この件ではもうこの人の前では泣けないなって強く感じて。それでふっと思い出したのがBだった」

――なぜBさんのことを思い出したんでしょうか。

「彼も、昔つきあっていた女性をガンでなくしているのね。そのときに、彼がその彼女に一生懸命寄り添っていたことを私もよく知っていたから。それがあって、辛いときにBのことを思い出したんだと思う。あの人なら、いまのこの気持ちをわかってくれるんじゃないかなって」

――親友のご病気について、ご主人の前では泣けないけれど、Bさんの前では泣けた……。

「そうなの。それで、会うようになってしまった。でも彼はものすごく親身になって話を聞いてくれたから。あの頃はBがいてホントに精神的には助かりました」

――3年前から始まったBさんとの情事は、ご主人には一度もバレていない?

「うん、Bとは家が近いのがよかったんですよ(笑)。土日はもうかなり昔からずっとスポーツジムに通っていて、それが習慣になってるのね、私。だから、Bと会うときも主人には『ジムに行ってくる』って」

――さすがにジムに行くときは、ご主人はガンガン電話連絡してこないというわけですね。

「私がジムに行っている間はね、主人はお昼寝タイムなんです。これももう習慣なの」

――あー、なるほど。つまり、そこがもっとも安全な時間帯というわけですね。Bさんとはいまも頻繁に会ってらっしゃいますか?

「ううん、最近はめったに会わなくなっちゃった。というのも、彼が一昨年の終わり頃に仕事の都合で福井県に転勤になったんですよ。それでその時点でいったん私から別れを切り出して、『もう2度と会わない、友達に戻るってことにしよう』って固く約束しあったんですけれどね。ところが去年の春に『東京に仕事で行くから一緒に泊まれないかな』ってごく当たり前のように連絡がきて」

――Bさん、メンタル強い人(笑)。

「ホントに。あんなにはっきり友達宣言したのにね。あんた、人の話なに聞いてたの? ってさすがにそう思って。『私たち友達になったはずだよね』って冷たい返信もしてみたんだけど。でも結局、情にほだされてお泊りしてしまいました。そこからはまた会える時は会うという感じになっちゃったけど、まぁいまは距離が離れているから。1年に1回ぐらい会えればいいかなって感じです」

彼氏とのセックスも楽しむけれど、夫からも求められれば応じる

 婚外恋愛の話を多く聞かせていただいたが、本連載の主旨は「更年期」。だが亜希子さんは、その症状がほとんどなく、それはピルを服用しているからではないかという。

 亜希子さんは20代の頃に卵巣のう腫と子宮内膜症を患っている。そのことがきっかけとなって自分のホルモンバランスが気にかかるようになり、医師に相談。ピルを服用するようになったという。中用量ピルの時代から飲み続け、現在は低用量ピルを服用中だ。実は、Bさんと再会したことで一時中断していたピルを再び服用するようになったという。それは「Bの子供を妊娠したりしたらシャレにもならないから」との気持ちからだったと亜希子さんは話す。

――30代後半から40代でピルを服用していると、血栓のリスクがあるといわれますが……。

「うん、私もお医者さんに言われましたよ。だから血液検査は必ず1年に1回しています」

――ピルはエストロゲンとプロゲステロンを含んだホルモン剤ですから、更年期症状の予防として飲み続ける女性は多いようですね。ただ閉経した場合はピルだとホルモン量が多くなってしまいますから、40代後半になると「いつまで服用すべきか」を婦人科で相談される方も多いようです。ところで亜希子さんは更年期症状の自覚などはありませんか? 精神面でも肉体面でも。

「ありますよー。実はね、汗をかくようになったの、大量に」

――それはいわゆるホットフラッシュでしょうか?

「違うの、セックスのときに大量に汗をかくようになっちゃって。終わったあとにまずバスタオルで体中を拭かないとダメなぐらいになっちゃった。それが1年前ぐらいから、急に」

――それ以外に気になる症状などは?

「ないですね。やっぱりピルを飲んでいることが、私の場合、更年期の予防になっているんだと思いますよ」

――ちなみに、ご主人ともセックスはされているんですよね。

「たま~にですけど、あります。1年に1回ぐらいかな。あのね、何年か前からセックスの最中に中折れするようになって。でも、たとえばマカとかバイアグラとかそういうのに頼るのが絶対にイヤみたいだから飲まないの。そうこうするうちに回数が少なくなって、1年に1回ペースに」

――60代ですものね、勃ちにくくはなってきますよね。

「ううん、勃つのは勃つの。ただ、中折れしちゃうのがいやみたい」

――彼氏がいても、亜希子さんはご主人の求めはイヤだとは思わないんですね。よく「他にセックスする男の人ができると、夫から触られるのがイヤになる」なんていう女の人の話を聞いたりしますが……。

「イヤじゃないなぁ。うちの人、セックスの面でも可愛いとこあるし。勃起したら『ほら、勃ったぞ』って見せにくるんですよ。そうなると、じゃあしょうがないなぁ、セックスするか、ってこっちも思っちゃう」

――そういう気持ちは……たとえば5年後でも変わらないと思いますか?

「変わらないと思います。5年後なら、私も一緒に喜ぶかな。お、70代でもまだ勃つか! って」

――もしも、の話になりますけれど。亜希子さんにAさんやBさんという彼氏がいなかったとしたら……。その場合はもっと旦那さんとセックスしたいなって気持ちになったと思われますか?

「ううん、たぶんそれはないと思う。独身時代にさんざん楽しんだから。私、セックスに悔いはないもん。主人と結婚するときにもね、セックスはもうなくてもいいかなと思ってたし」

――ずっと充実したセックスライフを送ってきた女性ならではの余裕を感じます(笑)。ちなみにもし閉経したことがわかったらご主人には話しますか? 彼にはどうでしょう?

「う~ん、主人には話すと思うけど……彼にはわざわざは言わないかなぁ。なんとなくそう思う」

――亜希子さんが思う閉経のイメージを教えてください。

「閉経したら妊娠の心配もないし、セックスをより一層楽しめると思ってるの。ピルからは解放されるし。私には、閉経=新たな扉が開かれるって感じかな。未知の世界を見てみたいし、味わってみたいです」

<取材を終えて>

この原稿を書いている最中に、女優の高橋ひとみの性生活に関するニュースが流れてきた。高橋が52歳、夫が50歳だった2013年11月にお互い初婚同士で結婚したという。その性生活はなかなか激しいものだそうで、ふたりが住むマンションの階下の住人からクレームがきたことがあったそう。管理人がその旨を伝えに来たとき夫は「うちだって新婚なんですから」と言い切り、高橋はその姿を見て「わぁ、素敵と思った」と、あるバラエティ番組で話していたようだ。

この連載を始めた当初は、50代女性でセックスを謳歌している取材対象者を探すのはなかなか厳しいのではないか、漠然とそう感じていた。だが、今回の亜希子さんの話を聞いてからというもの、案外そうでもないかもしれないと気持ちが変わりつつある。どうやら筆者自身も「閉経したらセックスは終わり」とのいにしえの考え方に知らず知らずのうちに染まり、似たような思い込みがあったのかもしれない。きっと50代女性はセックスにも恋愛にもまだまだ貪欲なのではないだろうか。いまはそんな気がしている。

亜希子さんの場合は不倫となるため、モラルを考えるとその生き方を褒めることはできないのかもしれない。けれど、セックスと恋愛を思い切り楽しんでいる彼女は生命力に溢れ、そして背徳という言葉からはまったく縁遠いと思わせる力強い存在感があったことは確かである。

(取材・構成=日々晴雨)

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最終更新:2017/03/12 20:00
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