『結婚さえできればいいと思っていたけど』著者・水谷さるころさんインタビュー(後編)

事実婚が増えれば、夫婦別姓が実現するかもしれない——「未届けの妻」のメリットとは?

2017/01/06 15:00
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結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)著者・水谷さるころさん

(前編はこちら)

■事実婚は、自分にとって最適な結婚生活を実現できる“カスタマイズプラン”

――36歳の時に、“事実婚”で再婚されていますが、なぜ、事実婚を選択されたんですか?

水谷さるころさん(以下、水谷) まず事実婚についてお話しすると、事実婚はいわゆる婚姻届を提出し、法律で認められた夫婦ではありませんが、「夫婦ですよ」という状態を指す広い言葉なんです。事実婚にもいろいろあるのですが、うちの場合は、生活実態をより法律婚に近い状態にするために、住民票を一緒にして同一世帯にして「未届けの妻」にするという方法をとっています。行政は、保育園や子どもの医療保険などに関する手続きにおいて「世帯」を単位として見ているので、籍は実は関係がないんです。

 共働きでお財布が別、どちらが扶養されるわけでもなく納税も別だと、法律婚をするメリットは少ないんじゃないかと思って。働いて生きていきたい女性にとっては、結婚すると、「世の中って、こんなふうなの?」とガッカリすることが多いんですよね。きちんと、わかりやすく看板を立てていかないと、保守的な結婚の考えの人に、仕事の面でも、家庭の面でも引っ張られてしまう。法律婚は“おまかせ安心パック”、事実婚は自分にとって最適な結婚生活を実現できる“カスタマイズプラン”のようなイメージです。

――おもしろい考え方ですね。

水谷  世間には、保守的な“結婚村”というのがあると感じることが多くて。村人は、村の掟から外れることをすごく嫌います。「結婚したのに、そんなに夜遊びするの?」とか、「毎日ごはんつくってないの?」とか圧をかけてくるわけです。うちは、夫がごはんをつくってるので、それを言うと、すごい嫌な顔をされて「あいつはダメ嫁だ」というレッテルを貼ってくる人がいるんですよ。理想のルールの通りにしてほしい、という圧をかけてくる。だから、私はその村から抜けようと思ったんです。私が欲しいのは、結婚じゃなくて家族ですから。

 結婚村の人は、同居が続いていると、「どうして結婚しないの? 早く結婚した方がいいんじゃない?」とか言います。でも、事実婚なら、「婚」がついているので、牽制にもなりますし、「ルールが違います」と伝えやすいんですよね。

――事実婚をして、大変だったことはありますか?

水谷 やっぱり親を説得するのが大変でした。「なんで、そんなことするの?」と聞かれますから。でも、「保守的な結婚観が嫌だから」とは言えないじゃないですか(笑)。いかにうまくオブラートに包みながら、「事実婚の方がいい」「普通に結婚しているのと変わらない」と伝えられるか。「名前も変わらないし、うちはフェアな関係だから」と言い続けると、私がごはんをつくっていないことなども、徐々にとやかく言われなくなっていきます。ただ、理解してもらうには、最低でも3年は必要だと思います。

――親世代を納得させるのは、なかなか難しそうですね。

水谷 うちは夫も私も両方とも再婚で、親の期待値がものすごく下がっていて、パートナーがいてくれるだけでも安心という状態だったので、説得しやすかったと思います。

 友達にも事実婚にしようとした女の子がいたんですが、初婚でそれを言いだすと、味方がひとりもいない。自分の親も、相手の親も嫌がるし、パートナーは「どっちでもいい」みたいな状況。女性側が「事実婚の方がいいな」と思っていたとしても、初婚でそこに至るのは難しいのが現実だと思います。

結婚さえできればいいと思っていたけど (幻冬舎単行本)
いろんな結婚の形があってもいい
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