『結婚さえできればいいと思っていたけど』著者・水谷さるころさんインタビュー(前編)

結婚さえできればいいと思っていたけど、「入籍したら仕事が減る」!? 婚姻届の魔力

2017/01/05 15:00

■婚姻届は、自分たちを救ってくれる魔法ではない

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結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)

――女性の場合はどうしても結婚をすると、仕事を辞める方向に結びついていきますよね。

水谷 男性の場合は、結婚しても、「仕事辞めるの?」なんて、絶対に聞かれない。むしろ「頑張らないとね」となります。結婚した後、私は本を出すために、かなり努力しました。本を1冊出すには時間がかかるし、コストパフォーマンスがとても悪い。でも「やらないと先がない、チャレンジするなら今しかない」と思って始めたんですけれど、そういうことをやり始めると、「男に養ってもらえるから、好きなことができるんだね」と思う人がいるようなんですよ。実際は、自分の貯金で生きていました。

 私としては、結婚をすることもチャレンジだったし、本を出すこともチャレンジだった。前向きに投資をしているつもりでも「結婚したから、コストパフォーマンスの悪い漫画にもチャレンジできるのね。旦那さんはさぞかし稼ぎがあって、サポート力のある方なのね」と思われてしまう。あれ? 夫の株ばっかり上がって、私は? なんかすごい損してない? ……と。

――結婚だけでも大変ですから、お子さんができたら、働く女性は、ここ一番の踏ん張り時ですよね。

水谷 子どもを保育園に預けていないと、仕事をお願いする側にとっては安心できませんよね。仕事します! とわかってもらうためにも認可には入れなきゃと必死でした。在宅のフリーランスの場合は、やっぱり簡単には入れません。うちは認可保育園に受かるために、まず無認可保育園に入れましたが、正直すごく高かったです。区によって、保育園に入れる基準は全然違うんですけれど、私の住んでいる区がフリーランスは無認可保育園に入れないと認可に入れないような仕組みなので、預けざるを得ない。うちは何がなんでも認可に入れるぞ! と収入の少ない出産後の時期に貯金はたいて頑張って無認可に入れて、2カ月で仕事復帰して……と実行したものの、正直、こんなに頑張らないといけないのか? 私の仕事は、こんなにまで頑張り、守るべきものだっけ? と、何度も弱気な気持ちになりました。

 でも、それをあきらめると、また仕事関係者から勘違いされることになるので、「やるしかない」と、頑張りました。夫はすごくフェアな人ですが、なんだか私と保活に対しての必死さが違う気がしましたね。それで私がすごく不安になり、どこかで「保活はお前の仕事だろ」と思ってるんじゃないの? 「保育園に入れなかったら、どうするつもりなの? 預けられなかったら、面倒を見るのは私なの?」と喧嘩しました。やっぱり男性とは危機感が違うんじゃないかな。女性が結婚して子どもを産んで、仕事をするのは戦いですね、ホント。今の時代、まだまだ頑張らないとダメですね。

――結婚をする前に気をつけるべきことはなんですか?

水谷 婚姻届を神聖化して、「私のことを一生面倒見てね」「これで私たちの一生は約束された」といった異様なまでに思い入れを込める人が多い気がするんです。でも、婚姻届を出すのは、ただの制度だから。自分たちを救ってくれる魔法ではない。結婚式をして、籍を入れてみたら、救われるどころか「○○しないとダメなんだ」という親世代の結婚観に呪われてることの方が多いんじゃないか、と私は感じました。

 今は不況なので、男の人が人ひとりを養うことは、現実的に考えてなかなか厳しいです。できる人もいるけれども、おっかぶされるのは困るからと、渋る場合もある。その時に、女性が結婚をしたいあまりに、家事などサービスをしすぎてしまうと、“お母さん”になってしまいます。共働きを考えているなら「経済的にお父さんの代わり」を求めたり、「なんでも面倒見てくれるお母さん代わりになる」という結婚ではなくて、「二人でちゃんとやっていこう」と目指す内容を確認した方がいいです。そういう現実的なところまで意思の疎通が取れる人かどうか、よく話し合うことが大切だと思います。とはいえ、失敗しても命まではとられないから、失敗してもいいと思いますけどね!
(上浦未来)

(後編につづく)

最終更新:2017/01/05 15:00
結婚さえできればいいと思っていたけど (幻冬舎単行本)
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