[女性誌速攻レビュー]「GINGER」1月号

「LINEのやり取りですら面倒」アラサーの恋愛描写がシビアすぎる「GINGER」ジュエリー特集

2016/12/05 19:00

■追い詰められた「GINGER」女子が行き着くスピリチュアル
 ファッション特集「12月だから欲しい服、したい着こなし」においても、その超現実主義は徹底しています。「女子会にデートに忘年会にと、年末につれて増えていくイベントに今なら何を買ってどう着こなすべき?予定と場所にふさわしい華やかなおしゃれセンス」とうたい、「白のレースブラウスはカラーパンツでほどよくモードに」「こっくり色スカートは個性派ニットでキャッチーに」など、細かいルールびっしり! 何かの試験でも受けるつもり? おしゃれするって、こんなに細かな気配りが必要なんですね! 

 しかし、紹介されているコーディネートは、思わず目を引くようなスタイルではないことから、「GINGER」女子は別に、ズバ抜けてファッションセンスのある人になりたいわけではなさそう。周りと、“ちょっとだけ”差をつけたい……そのために努力とこだわりを発揮しているように感じるのです。そしてそこには、「他人から愛されたい」「よく見られたい」という欲望も、あまり見えません。

 「GINGER」女子たちは、社会性を重んじる真面目なタイプなのではないでしょうか。誌面に登場する読者たちは、責任ある仕事を持って自立しているタイプが多いし、また、雑誌全体を通して、恋愛にまつわる企画が限りなく少ないことからも、男に依存するタイプではないように感じます。決して主体性なく流されているわけでもないし、ゆるふわな甘い夢を見て思考停止しているわけでもない。ちゃんと自分の力で、現実を真面目に生きている。そんな彼女たちのオシャレを楽しむ方法が、“周囲とちょっとの差をつける”なのかもしれません。

 そんな「GINGER」女子像が如実に表れていたのが、働くアラサー女性の物語仕立てになっている、レギュラーモデルの香里奈とカルバン・クラインのタイアップ記事「お気に入りのジュエリーと奏でる4つのWINTER STORY」。

 主人公女子のセリフを一部抜粋すると……「(彼氏と)会うのは3週間ぶり。お互い仕事が忙しくて、ここだけの話LINEのやり取りですら面倒に感じることもある」「予定のない休日に思うこと。携帯電話の電源をオフにして、今日は絶対のんびりするって決めた。でも……頭の中を空っぽにして何も考えないでいるのって、案外難しい。月曜に持ち越してしまった仕事、大丈夫かなぁ?彼とはこれからどうなるんだろう?(以下続くモヤモヤ。中略。)ゆっくりしたかったのに、ふだんよりもなんだかいろいろ考えてしまう」……なんてリアルすぎるストーリーなのでしょうか!? 女性誌の着回しストーリーって、もっと夢があるから! 「IT社長に突然見初められてプロポーズ!? 学生時代から6年付き合っている彼氏もいるのに……どうしよう(はぁと)」とか、そういう頭がお花畑のトンデモストーリーで全然いいから! と叫びそうになりました。服だって、インテリアだって、「自分には何が見合っているか」や「コスパは高いか」に固執せず、自分の心がときめくものを選べばいいのにと、思わずはいられません。

 そんな「GINGER」女子の窮屈そうな生き方を思うと、表紙の宮田のうつろな目は、「男に甘えていた」のではなく「死んでいた」のかもしれません。そして本誌には特集ページが組まれていないにもかかわらずガッツリ宣伝されていた「石井ゆかり開運手帳」、謎のスピリチュアル企画「アストロビューティー活用術」、旅行企画「大島優子、京都で食べて、祈って、恋をして」……これら全ては、真面目がゆえにTPOをわきまえすぎて疲れ果てた「GINGER」女子たちを癒やすためにあった企画なんですね。

 そんな彼女たちに朗報なのか、「GINGER エージェンシー」なる、夢あふれるオーディションが開催される模様。モデル、カメラマン、記者など「人生を変えるような新しいことに挑戦したい!」女性を大募集しているそうです。今後の展開が期待されます!
(橘まり子)

最終更新:2016/12/05 19:00
GINGER(ジンジャー) 2017年 01 月号 [雑誌]
「ちょっと差をつけたい」って欲望は深いよ
アクセスランキング