女のためのテレビ深読み週報

吉田沙保里ら女性アスリートを「恋愛ベタ」と見下すテレビが“浅はかすぎる”理由

2016/11/10 21:00

 今月の頭に結婚した柔道の松本薫が、夫との連絡の頻度が週に一度だったと明かすと、さんまは「毎日電話したいやんか」と松本に返し、「うんうん」と吉田がうなずくと、「あんた、わからへんやんか」「経験ないやんか」とツッコんでいた。「(恋愛の話に)参加したいよう」と叫ぶ吉田は、アスリートというより、モテないことを売りにするオンナ芸人のようだった。オンナ芸人であれば、モテないネタを披露することによって、テレビにたくさん映ることができるし、次の仕事にもつながるというメリットがあるが、メダリストの吉田に同じことをさせるのは失礼ではないだろうか。

 アスリートとして出演オファーを出しておきながら、業績よりも「モテるモテない」を重要視するのが、さんまをはじめとする「オトコの女性アスリート観」なら、「オンナの女性アスリート観」にも違和感を覚える。

 『一周回って知らない話』(日本テレビ系)で、10~20代の若者に、吉田のイメ―ジを調査したところ、「強い」「国民栄誉賞」というものに加えて「意外と乙女」「意外に女性らしい」という意見が女性から上がった。Twitterに、パジャマ姿やネイルアートをする写真をアップしたり、コキンちゃんとのツーショット写真を上げていたからだと思われるが、それのどこが“女性らしい”のか、私には理解できない。一般人のTwitterでもよく見かけるツイートが“女性らしい”と表現されるのは、「格闘技をやる女性は、女性らしくない」と思っているからではないだろうか。

 同番組によると、吉田は、実家がレスリングのジムを経営していたことから、自然とレスリングを始め、才能を開花させたという。音楽家の子どもが音楽の道へ進んだり、開業医の家の子どもが医者になるのと同じであり、“女性らしさ”は関係ない。さらに、吉田の親友である澤は、吉田の恋愛がうまくいかないことを「好きになったら、相手の立場や状況を考えず、自分の思いをどんどん言っちゃう」と分析していた。つまり、コミュニケーションの方法に問題があるわけで、格闘技をやっているかどうかではないのだ。

 さらに澤は、吉田の意外なエピソードを披露した。吉田は、彼女に好意を持つ男性とデートしたものの、吉田は途中で嫌になってしまい、友達を呼んで3人で行動したそうだ。好きな人には猪突猛進だが、そうでない相手とは我慢してまで一緒にいないというのは、わがままな印象を与える行為だが、なぜ吉田がそう振る舞ってしまうかは、少し考えればわかることである。

 女子レスリング界の“宝”である吉田は、ずっと自分中心の“姫”だったのではないだろうか。人は“何をやるか”ではなく、“どう扱われるか”で決まる。強くなければ、姫にはなれないのだ。格闘技の女性アスリートだからといって、勝手に見下す人は、浅慮といわざるを得ない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/11/11 10:23
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