神田つばき『ゲスママ』出版記念トークライブレポート

「私の“ご主人様”は私だった」神田つばきがSM、AV、性の冒険の果てに見つけたもの

2016/11/05 15:00

■子供の苦しみを先回りして生きる親たち

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「自分は何者かを知りたかった」と語る神田氏

 祖母と母という女性しかいない家庭で育った神田氏。思春期の頃「結婚してから驚かないように」と母と伯母に、親戚の伯父と一緒にお風呂に入るように計画されたことがあったという。そして海水浴で一緒にシャワーを浴びたおじさんのペニスが勃起していたことから、ペニスは邪悪なものだと思い込んだ。田房氏は、母親との関係で悩む娘たちの共通点として、「母親から『生理が来ているのか』と聞かれたり、管理される」というものを挙げた。さらに学校では性教育で妊娠・中絶の恐怖も植え付けると言う。

「母親が罪だと認識していた妊娠を超えた行為をしたときに、非常に爽快感を感じました。70年代にウーマンリブで活躍した田中美津さんの著書『かけがえのない大したことのない私』(インパクト出版会)を読んだとき、私は思春期に直面する苦悩に、一人で苦しませてくれる家庭に育ちたかったと気付いたんですね」(神田氏)

「お母さんが先回りして苦しむんですよ。『娘が苦しむはずだ』いう悩みを勝手に設定して、勝手に苦しんでる。その様子を見せつけられるんです。私は母に、苦しむという行為すらも奪われていたんだなと思います」(田房氏)

 親から被害を受けたと感じたら、徹底的に被害者をやりきること。親にも事情があったとか考慮するのはいったん置いておいて、自分のつらさに思う存分寄り添ってあげる。そのほうが傷の回復も早いし、今度は自分の加害性も見えてきて、ちゃんと自分の問題に向き合えるようになる。被害者ぶることは世間体が悪いと思われてしまうが、歓迎されるコミュニティがあるから、そこに入るのもいいと田房氏は語る。

■「お母さん辞めます」宣言

 では、次に自分が母となったとき、母の強権を抑えるためには、どうすればいいのだろうか。

 神田氏は「ある時点でお母さん卒業宣言すればいい」という。金銭的にバックアップする“お父さん役”は続けるけれど、お母さんは辞める。お母さんにしてほしいことがあったら、次に自分が子どもを産んだときにそれをすればいいと娘たちに伝えたという。「自分を解放しすぎても子どもは翻弄されるし、干渉しすぎても子どもが大変だから、中間地点を自分で模索して、球体にずっと乗ってる状態を保つしかない」と田房氏。

「親が性道徳的に厳しくすると、子どもは性別を問わず、罪の意識を植え付けられ、フェチ的な変態になります。逆に、親が奔放方向で崩れていると、子どもは親のようになるまいと、神経質なほど常識的に育ちます。子どもは親から学ぶのですが、性は無意識が介在するので、多くの場合、親のコントロールとは逆の方向に進みます。子どもを育てる際に留意しなければなりません」(宮台氏)

 教育しようとすると子どもに傷を残す。それならむしろ、親が好き勝手に生きた方が子どもとの関係は良好に保てるのかもしれない。

■“ご主人様”は自分だった

 母子関係や夫婦関係を振り切るほど、性の冒険を試み、自分の正体を探求した神田氏。自身でも「やりきった」と語る彼女が、性のオデッセイの果てに見つけたものとは。

「この本にはさまざまな性行為について書かれています。それを読んで傷ついた女性もいますし、『自分はそこまでしたくない』と思った方もいるでしょう。私は性の冒険を十数年間続けて、皆さんにもおすすめしたいとは一切思っていません。そこまでする必要はない。でもその冒険の果てに、一つだけわかったことは、私はずっと“ご主人様”を探していたけれど『私の“ご主人様”は私だった』ということ。それさえわかっていれば、誰に何をされようが、嫌なら『私はここから(私に)帰る』と思える。それだけは女の人に伝えたかった。真面目な専業主婦で一生を終えることもいい。その中で、自分で自分をコントロールできていればいいんだと思います」(神田氏)

(松田松口)

最終更新:2016/11/13 12:58
ゲスママ
自分は親のものでなく自分のもの
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