NPO法人Japan Hair Donation & Charity代表・渡辺貴一さんインタビュー

柴咲コウやベッキーもやっていると話題の「ヘアドネーション」 髪の毛をカットして社会貢献!?

2016/11/17 15:00

■頭髪のない人が自然に受け入れられる世の中が理想

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頭のサイズに合わせて完成したウィッグは、本人の要望のもとにカット

 これまで124台のウィッグを子どもたちに提供してきた、JHDAC。提供先は、8~18歳以下の子どもが対象で、約9割が女子、約1割が男子。幼い子どもの場合は親が、高校生以上の場合はスマートフォンなどで調べて、自ら申し込むケースが多いという。

 もちろん、心からウィッグを望み、手に入れた子どもは非常に喜ぶが、現実はもう少し複雑だ。幼い子どもの場合、保護者が子どものためにウィッグを求めるケースがほとんどで、特に母親の場合は、我が子に対して責任を感じてしまいがちだという。

「脱毛などの症状には、特に遺伝的要因は見られない。抗がん剤治療など、原因が特定できるもの以外は、脱毛のほとんどが原因不明(突発性)であると専門医も認めているんです。いつ、誰がなってもおかしくない」

 がんなどの病気の場合、皮膚が過敏になっているので、ウィッグを着けること自体が子どもの身体に負担になってしまう場合もある。また、生まれつき頭髪のない子どもであれば、本人や周りがその状態を自然な姿だととらえているので、ウィッグに戸惑うこともある。親が子どものためを思って申請したウィッグであっても、子ども自身が嫌がって着用しないケースもある。保護者の気持ちは十分すぎるほど理解できるが、まずは、使用する本人の気持ちを十分に尊重してほしいと渡辺さんは考えている。

「本当に求められているのはウィッグそのものではなく、安心できる普通の生活。ウィッグがなくても、頭髪がない状態の人がいてもじろじろ見られたりせず、自然に受け入れられる世の中が理想だと思う。そのような世の中で、ネイルやつけまつげみたいなおしゃれ感覚で、気軽にウィッグを装着できるようになればいい」

■賛同美容室も約1,500店舗に増加

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賛同美容室に常設されている募金箱。受け入れているのは31㎝以上の髪だが、長さが足りない人も寄付金などで協力することができる

 ヘアドネーションに対応したカットを行う、ウィッグを要望に応じてカットする、何人分かの髪の毛をまとめて事務所に送付するなど、さまざまな形でJHDACに協力する賛同美容室は、2016年11月時点で1,500店舗に迫る勢いで増加し続けている。しかしこれまで、特に協力を呼びかけたわけではないそうだ。

 ドナーが寄付に対応した方法でカットするようリクエストしたことで、美容室がヘアドネーションについて知ったり、「美容師さんがきちんと束ねて切ってくれなかったから、髪がバラバラになってしまった」「対応してくれる店を教えてほしい」という問い合わせがJHDACにあったりなど、ドナー個人の働きかけが大きかったとのこと。

 そこで、ヘアドネーションについて協力してくれていた美容室を、了解をとってHPに掲載したことが、賛同美容室の始まりだという。最初は東京や大阪など都市部のみだったが、募金箱を置く、ステッカーを張るといった条件を定め、賛同美容室のシステムを作り、協力方法を整理したことで徐々に増加。ヘアドネーションの知識も広まり、美容室側から協力を申し出てくることも多くなった。現在では月に100店舗前後(先月の2016年10月は97店舗)のペースで増えている。また、賛同美容室として登録されていない美容室から、髪の毛の束がまとめて送られてくることもあるという。

■髪を寄付する上で、一番気をつけてほしいこと

 毎日大量の髪が送られてくるJHDACの事務所だが、受け取る際、困っていることもある。「まずは、HPの情報をしっかりと読んでいただきたい」と渡辺さんは言う。

 JHDAC のHP(ヘアドネーションの仕方)では、送る際の手順を図解し丁寧に説明しているが、きちんと見られていないのか、間違った方法で髪の毛が送られてくることも少なくないそうだ。

 よくあるのは、毛束をラップやテッシュを重ねて包む過剰包装。ゴミが増え、作業の負担となっている。包装を解こうとして髪がバラバラになることもあるので、「可能な限り、簡易包装でお願いしたい」とのこと。また、特によくないのは、湿った髪の毛。「髪の毛が少しでも濡れているとカビが発生し、周囲にあるほかの毛束まで使えなくなってしまうので、完全に乾燥させてから送ってほしい」と渡辺さんは訴えた。

 前述した通り、寄付する側にはたくさんの思いがあるが、渡辺さん自身は気負いすぎず自然体だ。

「僕らはウィッグを必要とする子どものニーズに寄り添い、寄付したい人とつなげているだけです。ヘアドネーションを経験した多くの人々が、無毛症や病気で頭髪をなくした人たちの『普通の生活』について考えたり、思いやるためのきっかけとして、この活動が広がっていけばいい」

(谷町邦子)

NPO法人Japan Hair Donation & Charity 

最終更新:2016/11/18 23:42
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