下村労働衛生コンサルタント事務所・下村洋一所長インタビュー

「電通事件は過労死の歴史からすると非常に特殊」産業医が語る、働く女性が身を守る方法

2016/11/16 15:00

■ポジティブな思考や、健康的な生活を心がける

――具体的にどのような症状が出たら、うつを疑うべきですか?

下村 やはり不眠です。眠れなかったら要注意。ぐっすり眠る人に、体調不良の人はあまりいませんからね。仕事で失敗をしたことで眠れなくなり、寝不足のまま出社したら体調が悪いからもっと失敗して怒られる、そしてまた眠れなくなるという負のサイクルです。しっかり眠れば元気に出社できて、仕事もうまくいくんです。

 また、物の考え方をポジティブにするのも重要です。例えば、やりたくない仕事を上司から振られたとします。これを「こんな仕事やりたくない、嫌だな」と思うか、「この仕事をやるのは、チャンスかもしれない」と思うかです。

――ポジティブな思考をするには、どうしたらいいのでしょうか?

下村 良い方向に持っていこうと心がけることです。このような思考は、良質な睡眠でしか生まれません。そして、きちんと食事をとり、飲酒やタバコを控えること。健康的な生活の基本を意識してください。

――もし、過労によるうつのような症状を感じた場合、どうしたらいいのでしょうか?

下村 まず疲れによる体調不良は、生活習慣の改善で治すという発想を持ってもらいたいです。「寝てなければ、体調が悪くなるのは当たり前」と考えてください。それでも体調が回復しないようなら、産業医や、かかりつけ医や、心療内科医といった医師に相談してください。焦りのあまりパニックにならないよう、落ち着いて考えることも重要です。つらいときは、嵐をやり過ごすような気持ちを持つことです。時間がたてば、嘘のように気分がよくなることも多いのです。ご両親や親しい方に相談することも重要です。

――眠れないとき、「寝ないといけない」と思うと、ますます眠れなくなった経験があるのですが、どうすれば眠れますか?

下村 寝なくたっていいじゃない。いつかは眠くなりますから。その日は眠れなくても、翌日は確実に眠れます。それに、若い人は1日くらい寝なくても大丈夫ですよ(笑)。

(姫野ケイ)

下村洋一(しもむら・よういち)
下村労働衛生コンサルタント事務所所長。関東地区を中心に顧問医・委託産業医業務を行う。中小企業や事業所の健康管理に力を入れている。

最終更新:2016/11/18 23:44
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