【連載】永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報23

永田町のアラフォー女性秘書は独身が多い その理由とは?

2016/10/31 15:00
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Photo by Bold Content from Flickr

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■年内解散に秘書もヒヤヒヤ?

 「年内解散」が現実味を帯びてきている永田町です。神澤の長年の経験から察するに、自民党は「来年1月解散、2月選挙」を前提にして、「地元活動を徹底せよ」という指令を出しているようです。なので、今はひとり、またひとりと仲間の秘書たちが「選挙が終わるまで」との期間限定で地元へ行かされています。

 とはいえ「(実際には選挙は)ないだろうなー」と思っていたのです。でも、ここにきて民進党内のいざこざが原因で、どんどん「解散総選挙」の雰囲気が高まっています。しかも解散時期が、年内に前倒しされそうな……。

 選挙は、議員もですが、秘書にとっても仕事を続けられるかどうかの瀬戸際のイベントなので、その動向は気になります。

■それなりの収入を保証される「公設秘書」という身分

 国会議員には、3人の公設秘書の給与を国費で用意してもらえる制度があります。それぞれ「政策秘書」、「第一秘書」、「第二秘書」という呼称で登録される「特別職国家公務員」で、条件は犯罪歴がなく、日本の国籍を有していること、年齢が65歳以上でないことです。

 労働条件は、それぞれの国会議員の事務所で違うので一概には言えませんが、「公設秘書」になれれば、それなりの収入を保証されます。なお、政策秘書だけは「国会議員政策担当秘書資格」という国家試験に合格しなければなりません。かなりの難易度で、合格者も年に20人未満です。ただ、それに合格してもコネがないと就職できないので、それほど人気はないようです(笑)。

 また、一定の期間、公設秘書を経験すると「政策担当秘書選考採用審査」の認定のための講習を受けることができます。国会議員の推薦を受けて、この講習を受講するだけで資格を得ることもできるのです。試験で資格を取った政策秘書を「試験組」、公設秘書の経験年数で資格を取った政策秘書を「経験組」と呼び、両者は長年対立しています。「試験組」からすれば、「政策もできないのに政策秘書を名乗るな」ってことなんでしょうね。これに対して「経験組」からすれば、「あらゆることに対応できる柔軟性があってこそ優秀な秘書なのだから、政策だけ担当していればいいわけではない」という理屈のようです。

■40代の女性公設秘書は、月給35~60万円

 永田町には、多くのアラフォー女性秘書が働いていますが、独身の比率が高いですね。そして、それなりに稼いでおられます。40代の女性で考えると、公設秘書は月給35~60万円程度で、民間企業の平均賃金より高いのも、独身が多い理由のひとつかもしれません。

 でも、神澤は、一番の理由は、それだけのキャリアを積むまでの間、女性というだけで攻撃してくるオジサマたちと戦い続けた結果、デートをする時間を作ることもできず、男性に対する夢も希望も失い、「気がつけば独身」っていうことかなあと思います。

 中には、“愛人秘書”という立場で独身を続ける人もいますが、愛人でかつ優秀でない限り、再就職先は見つからず、いずれは永田町から追い出されてしまいます。

 議員が自費で雇う私設秘書だとお給料が安く、生活が大変なので、議員の落選などで就職活動が必要になった時は、それはもう必死です。そんなに苦労をしても、民間企業ではなく永田町で働くことを選択する独身アラフォー女性の本音は、「ここまで頑張ってきた自分を大切にしたい」ということではないでしょうか。

 そして、40代ともなれば、キャリアも10年以上のベテランとなります。地元からの陳情の対応を任されたり、政治資金を集めるパーティを取り仕切ったりと、責任が大きくなっています。事務所の中でも、「女」から「人間」として扱ってもらえるようにシフトしてくる時期であり、仕事内容も面白く感じる頃なのかもしれませんね。

 自分が関わった陳情をうまく処理できて感謝してもらえたり、根回しに成功してプロジェクトが無事に完了したりした時、ボスと一緒に法案策定を頑張って、それが法律として成立した時などの充実感・達成感は、なかなか味わえないものだと思います。

 女性秘書は、40代でやっと、ひとりの人間として見てもらえる機会が出てくるので、「もっともっと頑張って、もっともっとたくさんの人たちを救える法律を作る手伝いをしたい!」という使命感が、永田町の女傑(?)を支えているのかもしれません……。

■年齢を重ねた女性の枠は、とても狭い

 秘書の再就職活動はほんとに厳しくて、表向き年齢制限はないものの、実際、年齢を重ねた女性の枠は、とても狭いです。仲間たちとよく「今のボスに感謝して、仕事頑張らないとね~」と話しています。悪く言えば、今の事務所にしがみついていないと、次の事務所に採用してもらえる可能性はゼロに近いのも現実なのです。万が一の時は退職金もほとんどない公設秘書。私設秘書の場合は、そもそも退職金なしが普通で、貯金が趣味という人もいますよ。なので、アラフォー女性秘書の未来は、なかなか明るくありません。

 そんな中の解散総選挙の雰囲気、人一倍一生懸命頑張って、ボスの立場も自分の雇用も守りたいのが本音です。どうなるのかわからないのが、選挙の怖さです。これから、もっともっと忙しい毎日になるのでしょうね。

 忙しい中で“遅めの春”をゲットしている先輩たちもいるので、「いつかは結婚したい」という願望を捨てていない、欲張りな一面もありますよ(笑)。

 ※連載は今回で終了です。引き続き、ビジネスジャーナルに移動して連載します。

最終更新:2016/10/31 18:19
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