仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

高嶋ちさ子、豪快な乱暴者キャラの奥に見え隠れする「真面目な女の子」の姿

2016/10/27 21:00

 高嶋の中には“不安の種”が絶えずくすぶっていて、そこにイレギュラーなことが起きると、どうしたらいいのかわからなくなって、キレてしまうのではないだろうか。キレやすい人は、甘えん坊でもあると私は思う。高嶋がキレたエピソードを披露する時、その対象は夫や子ども、もしくは「高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト」の所属メンバーである若い女性の場合が多いが、彼らは全員、高嶋に「逆らえない、もしくは逆らわない」人たちである。子どもは母親の愛がなければ生きていけないし、女性の団員が高嶋にたてついたら、仕事に不利益になることは目に見えている。高嶋の夫は温厚で、高嶋がキレても自分がキレ返すタイプではない(高嶋の夫がキレて物に当たるタイプだったら、高嶋のバイオリンは破壊されているだろう)という。キレやすい人が、実態のない“不安”を抱える一方で、「この人になら怒っても大丈夫」と相手を選んで、どこかで甘えているように私には見える。

 高嶋は『ソロモン流』(テレビ東京)で、ダウン症の姉について、母親から「姉を大事にしないとバチが当たる」「姉がいるから高嶋もこの世にいる」など、姉を大事にするように繰り返し言われていたことを明かし、また過去の『徹子の部屋』でも、姉に意地悪をしたり、姉を変な目で見たりする人に対し、兄と一緒になって仕返しをするうち、喧嘩っ早くなってしまったと語っていた。

 さらに『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)で、「私より兄の方が、出来が悪いのに、母親は兄をかばう」とコメントするなど、自分より兄の方が母に可愛がられていると感じているようだ。こういったエピソードから見え隠れする高嶋は、豪快でも乱暴者でもなく、「親の言うことをよく聞いて、努力ばかりしてきた小さな女の子」であるように私には見える。

 高嶋は2人の息子がおり、『徹子の部屋』で長男について「ぼけっとしているところが可愛いです」と語っていた。ぼけっとしているように見えることと、長男が本当にぼけっとしているかは別問題だが、もし後者である場合、誰にも変な気使いをせずに過ごせているという意味で、彼は幸福なのかもしれない。『白熱ライブ ビビット』(TBS系)で、息子について「こんなに男の人に愛されたことないっていう幸せはありますよ」とも語っていた高嶋。だからこそ、そんなキイキイせずに、ぼけっとしたお母さんになってはどうかと思うのだが。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/10/27 21:00
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