B・カシワギ氏インタビュー

「魔女ビジネス」って儲かるの? 現役魔女に聞く、“心を動かす”魔術の可能性

2016/10/09 19:00
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魔女のB・カシワギ氏

■押し売りをすると失敗するのが、魔女ビジネス
 トークイベント終了後、あらためてカシワギ氏に、魔女ビジネスについて話を聞いた。まず、カシワギ氏のお店「銀孔雀」では、どのような魔女グッズを売っているのかと聞いてみると、動物の骨・皮、石や植物のほか、「中身が見えないより見えた方が、効果があるだろう」と考えた、ガラスの中に蛇の皮や炒った大豆を入れたお守り、知人の結婚式で使ったバラの花を入れた恋愛の運気が上がるマジカルオイルなどだそうで、それらの多くは自ら作ったものだという。

 また価格帯は、数百円から数千円と比較的リーズナブル。日本産にこだわっているという材料は、「前にジビエの獣肉屋を営んでいたので猟師さんのツテがあり、動物の骨や皮を手に入れられる」と、自ら足を運んで入手していることも明かしてくれた。

 日本にはいくつか魔法や呪術のセレクトショップは存在するが、人の弱みにつけこむような霊感商法だったり、「20万円であなたも魔女になれる」という選民思想的な売り方だったりと、高額であることがしばしばなんだとか。そんな中、カシワギ氏は「神道に傾倒していなくても、デートで初詣に行くことがありますよね。そんなふうに、魔女を、オカルトという古めかしくてダサく、内向的に見えがちなものを、明るくポップに、現代を楽しく生きる選択肢の1つ、新しいライフワークとして提案したいという意向が強い」という。

 またお店では相談料は無料のため、儲けはグッズの売り上げのみ。ズバリ、魔女ビジネスは儲かるのかと聞くと、「月収は、一般のサラリーマン程度とまではいかないまでも、店をやっていけるくらい、食べるのに困らないくらいには」という返答が。お店を始めて2年程度というのは、一般的な雑貨屋が「これから軌道に乗り始める時期」だといい、さらに「銀孔雀のオーナーである師匠がお金持ちなので……(笑)」と裏話を明かしてくれた。

 「こうした商売は、押し売りをすると絶対にスベってしまう。いま、うちがうまくいっているのは、師匠も手伝ってくれている店員も、ある程度経済的には余裕があって売り上げ至上主義になっていないから」なのだとか。また、銀孔雀は立地的にローティーンや30代のお客さんが多いが、スピリチュアル系は、金銭的余裕のある中年世代以降に響くものであるため、魔女ビジネスの市場は、今後もっと大きくなっていくだろうと予想していた。

 ちなみに、魔女ビジネスに向いている人の“気質”を聞くと、カシワギ氏いわく「客観的な目線が持てる人」。魔女になりたいという人の中には、“うまくいかない現実の逃げ道”として魔女というアイデンティティを求める人がいるのだそうだ。自分や人の心を動かす魔女にとって、「魔女の私ってすごい」「ほかの誰もなれない魔女になっている」といった自己承認欲求への執着や選民思想の考えは不要だと断言した。

■魔女の力を別の道に生かす方法
 そんなカシワギ氏だが、「この魔女ビジネスで直接的に儲けたいわけでもない」とも語る。それは「人の心を動かしたり、物事を解決に向かわせたりする論理的思考力やコミュニケーション能力といった魔女スキルを、別の仕事に生かす方がいい。例えば、教育やコンサルティングですね」とのこと。その方が、今の時代における魔女らしい生き方であるし、ビジネスとしても可能性があるのだとか。

「感情の行きどころを、いったん魔術というクッションに当てて、冷静に自分を見つめ直せるのが魔女の素晴らしいところ。好きな人がメールをくれないと腹立つけど、それをそのまま本人にぶつける前に、一度、論理的に納得のいく祈祷や魔術グッズを使ったあれこれをやってみる。そうしているうちに、だんだんと自分の心がコントロールでき、ポジティブになれるはず」

 一般的には、おどろおどろしいイメージが強く、空想上のものでしかない「魔女」。しかし現実の魔女ビジネスは、稼げる可能性を大いに秘めているようだ。
(石狩ジュンコ)

最終更新:2016/10/09 19:00
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