『頭痛女子バイブル』監修者インタビュー(前編)

生理前の頭痛はPMSではない!? 頭痛専門医が教える、「女と片頭痛」の意外な事実!

2016/09/11 21:00
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五十嵐久佳医師

 小学生の頃から、かれこれ20年以上の片頭痛持ちだ。化粧ポーチに市販の鎮痛薬は欠かせないが、薬を飲めば治るからと、自分の頭痛についてさほど考えずにここまで来た。書籍『頭痛女子バイブル』(世界文化社)は頭痛の症状や原因が網羅的に触れられており、頭痛持ちが見たら、なぜ自分のことをここまで知っているのかと驚くだろう。知らなかった頭痛の対処法までもが紹介されている。身近な病気でありながら案外わかっていない頭痛。同書の監修を担当した、富士通クリニック頭痛外来の五十嵐久佳医師に話をうかがった。

■生理前の頭痛はPMSではない!?

――『頭痛女子バイブル』の中で、代表的な頭痛として片頭痛と緊張型頭痛が紹介されています。片頭痛は字の通り、頭の「片方」が痛くなるのでしょうか?

五十嵐久佳氏(以下、五十嵐) そうとは限りません。片頭痛の場合、60%の人は頭の片側が痛みますが、40%の人は両側が痛みます。また、痛みの性状としては「ズキンズキン」とした痛みが多いのですが、締め付けられるような痛みの方もいます。片頭痛の一番の特徴は動くと痛みが増すことですので、痛む場所や痛み方でなく「じっとしていた方が楽」なら片頭痛の可能性が高いですね。それから頭痛発作中に光や音を煩わしく感じたり、吐き気を伴えば、ますます片頭痛の可能性が高くなります。

――片頭痛持ちの女性は、30代で男性の4倍近くにもなると本書にありました。女性が圧倒的に多いんですね。

五十嵐 はい。10歳くらいまでは、男の子の方が片頭痛の有病率は高いといわれていますが、15歳以上の日本人を対象とした全国疫学調査では、いずれの年代も女性の方が片頭痛の有病率が高かったです。初潮は大体11~12歳くらいですが、それ以降の年齢になると女性の有病率が高くなることから、片頭痛は女性ホルモンと関係していると考えられています。また片頭痛は10~20代で始まることが多いので、40歳以上になって初めて片頭痛を経験した場合には、ほかの病気がないかMRIなどの検査が必要となります。

――女性ホルモンと関係しているということは、生理中に片頭痛になる女性が多いのでしょうか?

五十嵐 女性片頭痛患者さんの約半数は片頭痛発作が月経と関連して起こるということを自覚していて、実際に頭痛ダイアリーで確認すると、月経2日前から月経中に片頭痛が起こることが多いとわかります。月経に関連して起こる片頭痛発作は、痛みが強く薬が効きにくかったりします。しかし、月経前に頭痛があるとPMS(月経前症候群)と診断され片頭痛としての治療がなされていないことも多いです。また、患者さん自身も月経中に起こる片頭痛をいわゆる「生理痛の一部」と思ってあきらめていることもあります。

――確かに、PMSの症状の中に「頭痛」はありますね。

五十嵐 でも、その頭痛がどのような頭痛かという分析がされていないのです。更年期障害の症状としても頭痛が挙げられていますが、やはり頭痛の詳しい調査はなされていません。例えば片頭痛か緊張型頭痛かで治療法が変わってきますので、どのような頭痛が起きているのかきちんと診断をつけることが重要です。患者さんは婦人科を受診することも多いので、婦人科の先生方に向けての啓発も必要です。

『頭痛女子バイブル』
あらゆる不調の前に立ち塞がる「女性ホルモン」!
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