映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

リスキーだとわかっても、少女を愛する決断をする女――『私の少女』の“災厄としての愛”

2016/08/31 21:30

◎社会から顔を背ける2人の決断
 ある日、かつての「同性愛問題」で別れざるを得なくなった相手の女性が、ヨンナムを訪ねてやって来るが、結局2人の間に復縁はない。レズビアンというだけで好奇の視線と非難に晒され、降格させられ、大きな傷を負ったヨンナムの心は、その警察官の制服のように固い殻で覆われ、過去には目を向けまいとしているのだ。同時にその心には、すでにドヒが棲みついている。

 だが、ヨンナムと前の恋人が別れのキスをする光景を偶然目撃したヨンハは、「女のくせに生意気な所長」の弱みを握ったつもりで、それをネタに彼女を脅すようになる。不安を覚えたヨンナムは、夏休みが終わったのを潮に、嫌がるドヒを無理矢理家に帰す。

 彼女の中にある危機感は2つ。レズビアンであることを根拠にドヒとの関係を疑われては、職を失うことになりかねない。そして、これ以上ドヒと一緒にいたら、互いにますます別れがつらくなる。

 外国人の被雇用者を搾取し暴行したかどでヨンハを刑務所に送った後、ヨンナムは1人になったドヒを再び保護者として引き取るが、復讐に燃えたヨンハが「未成年者への性的虐待」でヨンナムを告発し、彼女はドヒの目の前で連行される。

 ここから始まる、ヨンナムに対する警察のデリカシーを欠いた容赦のない尋問、カウンセラーとドヒの間に交わされる応答は、もっとも残酷でつらいシーンだ。父が釈放され、ヨンナムは戻れないことを知ったドヒは、密かに一計を案ずる。まだ十代半ばになるかならないかの少女の、文字通り体を張った恐ろしく危険な賭け。暴力的な父と金輪際縁を切り、大好きな年上の女性を助けたい、いや奪い返すのだという、奔流のような思い。

 それが辛くも成功した結果、ヨンハは「未成年者への性的虐待」で再逮捕され、ヨンナムへの誤解は解けてソウルへの帰還が許される。

 ひとり家に残されたドヒから「おばあさんの死」の真相を聞いたヨンナムは、その秘密を共有していく決心をする。それはもちろん職務に違反することであり、同時に同性愛者ゆえの関係を疑われかねない重大でリスキーな決断だ。自分と自分の愛する人を守るためには罪を犯すことを厭わない少女ドヒが、この先どんな「お荷物」になるかもわからないのだ。

 それでも彼女は、その「災厄としての愛」の中に飛び込む。なぜなら、それこそが自分の心から望む幸せだとわかったからだ。

 雨の中を村に向けて走るヨンナムの車の映像で始まるこの映画は、最後に再び雨の中、ドヒを助手席に乗せて走り去る彼女の車を映し出す。遠ざかる2つの赤いテールランプは、2つの孤独な魂が寄り添って生きていくことを暗示するかのようだ。

最終更新:2019/05/21 16:48
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