【連載】永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報7

候補者の街宣車は“戦車”? 戦争用語が飛び交う選挙現場の不思議

2016/07/05 15:00
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総務省ウェブサイトより

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■宣伝カーは「戦車」、朝の街頭演説は「朝立ち」

 6月22日、第24回参院選が公示されました。投開票が行われる7月10日まで、18日間の長い闘いとなります。本来は参院選は17日間なのですが、6月23日が「沖縄慰霊の日」で、選挙になじまないということで前倒しになりました。たまにそういうこともあります。

 選挙活動といえば、街頭宣伝カーから候補者の名前を連呼している様子をイメージされる方が多いのではないのでしょうか? 衆議院議員の選挙は14日間ですので、今回はとても長く感じます。北海道などの広い選挙区では、選挙対策本部で中心になって選挙を回していると、17日間でも時間が足りないように感じますが、手伝っている立場では、正直「長いなあ」と、げんなりしてしまいます。

 しかし、当事者にとっては、議員として活動を続けられるかどうかの生死を懸けた戦いなので、皆さん必死です。

 事務所では、「おい、“戦車”は今どこだ? あと10分で到着しないと、“陣地”を取られるぞ! 弾(タマ)は足りているのか!」といった怒号が聞こえてきたりします。「え、どういうこと? 戦争でも起こっているの?」と思いませんか? 神澤も秘書になってすぐの頃は、飛び交う「選挙用語」に目が点になっていました。

 選挙活動の現場では、宣伝カーのことを「戦車(宣車)」と呼ぶのです。「陣地」は、駅前の広場などで街頭演説を行うための場所のことです。「弾」は、配布するビラ(チラシ)のことを指します。

 もう時効ですが、少し前までは、「とうとう実弾をばらまかないといけないタイミングだな」などと「現金」のことを「実弾」と表現していました。かつては選挙でお金をまくのもアリの時代があったのです。さすがに今はないと思いますが(笑)。

 ほかにも、朝早くに街頭演説をすることを「朝立ち」、夕方だと「夕立ち」と言います。朝の街頭演説の呼称を口にするのは、新人の頃は恥ずかしく感じたものですが、永田町にいると感覚が麻痺してしまいますね。今では、大声で「朝立ちの準備はできているの?」と言っている自分がいます。どんな罵声を浴びせられても、笑顔でビラを配り続けると、顔面神経痛のようになり、目の下がぴくぴくしてきます。

 街頭演説をしている光景を目にしたら、選挙スタッフから、ぜひビラを受け取ってあげてくださいね。疲れ気味の顔で配っているスタッフの表情が、「ありがとうございます」と一瞬で明るくなるのを見ることができるでしょう。ビラには、候補者の熱い思いが込められています。プロフィールや公約を読んで、「ふーーん」という程度は関心をもってもらえたらうれしいです。

■どんな選挙でも、1票1票が積み重なって民意となる

 投票できる年齢が18歳に引き下げられ、選挙をがんばっている陣営(選挙事務所)も、どういう選挙活動を行えば皆さんに伝わるのか、試行錯誤しています。ツイッターなどSNSを利用する陣営も多いですが、どうなのでしょう? 神澤は、アメリカの大統領選挙のように、選挙ボランティアスタッフとして関わりをもってもらったら身近に感じてもらえるのではと考えていますが、日本の選挙制度では……と、ため息が出てしまいます。

 なぜなら、選挙活動でビラ配りや、電話やインターネットでの応援依頼ができるのは、無償のボランティアに限られているのです。つまり、一日中汗だくでビラを配っても、電話をかけまくっても、ぜんぶタダ働き。陣営からは何のお礼もできないのです。せいぜい、お茶とお水くらい。お弁当もダメです。

 でも、事務所内で働く「労務者」として選挙管理委員会に登録した有償のスタッフにはお弁当も出るし、働きに応じてお給料も出ます。でも、この「労務者」は、ビラ配りや電話かけなど、有権者に投票をお願いする行為は禁止されているのです。意味がわかりませんね。

 これでは、選挙のお手伝いをしてくれる人を確保するのは、ほぼほぼ無理だという状況が、わかってもらえますか?

 読者の皆さんは、猪瀬直樹さんとか舛添要一さんの騒動に飽き飽きして、「たかが1票で、世の中が変わるわけはない」なんて思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

 投票にはぜひ行っていただきたいと、永田町の秘書は心から願っています。どんな選挙でも、1票1票が積み重なって民意となります。決して無駄にはなりません。国政選挙であれば、私たちのボスである国会議員たちが、皆さんの思いを受け、少しでも生活が豊かになるようにと法律を新しく作ったり、環境の変化に合わせて改正したりしています。

 本当は、国会議員もその秘書たちのことも、もっともっと身近に感じてほしいのですが、難しいですね。まだまだ私たちの努力が足りないと反省しています。もう少し選挙運動が続くので、何かと騒がしいとは思いますが、せわしく動き回っているスタッフの中に神澤がいるかもしれませんよ。うるさく感じてしまうかもしれませんが、いろいろな候補者を数秒でもいいので観察して、投票する時の参考にしてくださいね。

最終更新:2016/07/22 21:01
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