『同性カップルの子どもたち』著者・杉山麻里子さんインタビュー(前編)

アメリカの「ゲイビーブーム」とは? 生殖ビジネスの先進地における同性カップルの子育て

■精子バンクの利用者は、まるで洋服を選んでいるような感じ

――著書では、レズビアンカップルに精子を提供する「カリフォルニア・クライオバンク」という精子バンクの事例を紹介されています。杉山さんご自身、同社のサイトに登録してドナーのプロフィールを見ていたら、「まるでネットショッピングをしているような感覚に陥った」と振り返られています。精子バンクが、社会的・倫理的な問題を乗り越えるためには、まだまだクリアにするべき点もあると思うのですが、いかがでしょうか?

杉山 「規制をなるべく緩くして、あとは利用者側の自己責任に委ねる」という姿勢は、代理出産と共通しています。ある程度の安全性は確保していますが、倫理的な問題となってくると、精子バンクのサービスを使う側の意識次第になってきます。

 実際のところ、ウェブ上のドナーカタログを見ると、「金髪、青い目」「身長180センチ」「スポーツ万能」「成績優秀」といったスペックがずらりと書かれています。そうすると、洋服を選ぶ時のように、“一番お買い得なもの”を選ぼうという気持ちになってしまいますよね。ただ、人間を1人つくるというのは服を買うのとは責任がまったく違うので、利用者は何を優先するのか、生まれてくる子どもの立場に立って、真剣に考えておく必要があると思います。

 これは実際にあった話ですが、精子提供で生まれた子どもが成長して生物学上のお父さんに会った時、精子バンクのプロフィールにはランニングが趣味だと書いてあったのに、実際はまったく違っていたというケースがありました。また、精子バンクを利用して子どもを産んだけれど、注文したものと異なる精子が送られてきていたと後でわかり、裁判沙汰になったこともあります。

 個人的には、第三者配偶子(第三者の精子・卵子)による生殖補助医療を選んだ場合、生まれてくる子どもの出自を知る権利を大切にするべきだと思うので、将来子どもに会う意思を持っていたり、オープンに付き合ってくれたりするドナーを選ぶという観点が大事なんじゃないかなと思っています。このあたりは、子どもに生物学上の父や母について説明を求められる可能性が高い分、異性婚カップルよりもむしろ同性カップルの方が進んでいて、学ぶべき点が多いと思います。

■まずは制度を変えていく必要がある

――日本でもパートナーシップ条例の施行をはじめ、17年度からは高校の教科書に「LGBT」という言葉が登場するなど、社会がセクシュアル・マイノリティを積極的に受け入れようとする傾向がみられます。とはいえ、まだまだアメリカに比べれば差があると思いますが、制度・文化・倫理・世論など、どこから乗り越えるべきだと思われますか?

杉山 LGBTの権利保障という面では、働きやすい職場づくりや学校でのセクシュアル・マイノリティ教育など、課題はたくさんありますが、同性カップルが子どもを持つという点でいえば、まずは制度を変えていく必要があるかなと思います。現状では、同性カップルが子どもを持つことのハードルが高いからです。

 たとえば、里親、養子縁組は、原則として結婚している夫婦を対象としている自治体が多い。性別適合手術をして戸籍上の性別を変え、異性と結婚した人が夫婦で養子を迎えた事例はありますが、法律婚が認められていない同性カップルは、まだこれからです。また、生殖補助医療の利用も、結婚している夫婦を前提としているため、レズビアンカップルは医療機関で体外受精や人工授精などの治療を受けることも難しい。ゲイカップルに至っては、代理出産は日本で認められていないので、選択肢がほとんどありません。まずはアメリカのように、里親、養子縁組を同性カップルに広げるところから始める必要がある、と思います。

 次に世論ですね。日本ではまだ、「子どもがいじめられたらかわいそう」といった理由で、同性カップルの子育てに否定的な考えを持つ人が少なくないかもしれません。それは、周りに子育てしている同性カップルがいない、もしくはいても、カミングアウトすることができず、顕在化していないからだと思います。制度を変えることで、同性カップルがつくる家族も他の家族と同じなんだと感じる人が増え、世論が変わっていくことを期待しています。
(末吉陽子)

(後編に続く)

最終更新:2016/07/25 15:27
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