裁判シーンより小ネタ優先という新しさ

『99.9』、小ネタの嵐が「狂気の沙汰」! テレビ関係者が唸った“細かすぎるネタ”検証

2016/06/04 11:45
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『99.9 ―刑事専門弁護士―』(TBS系)公式サイトより

 人気ドラマ『99.9 ―刑事専門弁護士―』(TBS系、日曜午後9時)。刑事事件の裁判有罪率が99.9%といわれる中で、残された0.1%の可能性に賭けて真実を追い求めるリーガル・エンターテインメントだ。

 5月29日に放送された第7話までの平均視聴率は16.7%と、今クールの民放ドラマでナンバー1を誇っている。期待されていた福山雅治主演の月9ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系)の8話までの平均視聴率8.4%と比べても、ほぼ倍の数字を稼いでいる計算だ。


 さて、この作品の醍醐味は、事件を解決するまでの謎解きの楽しさ、嵐・松本潤演じる型破りな弁護士・深山大翔を始めとするキャストたちの、チグハグかつ絶妙な掛け合い、そしてシーンに散りばめられた小ネタの3つに集約されるだろう。

 実際に7話までの「小ネタ」をつぶさにチェックしてみたというテレビ局スタッフいわく、「どれを1つとカウントするのかにもよりますが、特に一番多く見受けられたのが5話目です。美術スタッフ、そして演出陣による小ネタへの執着は、正気の沙汰とは思えない」と舌を巻く。

 その一方で、「ジャニーズファンにとっては見逃せない部分もあるのでは」と指摘する。今作のチーフディレクターを務める木村ひさし氏は、かつてSMAP・中居正広主演の『ATARU』を手がけた演出家としても知られており、『99.9』の1話に早くもそれを喚起するシーンが出てきたという。

「松本演じる深山に、斑目法律事務所の所長・斑目春彦(岸部一徳)が初めて声を掛けたオープンカフェの壁に、かつて『ATARU』で中居演じるチョコザイが好んで吸っていたspeedy社のケチャップのポスターが一瞬映りこみました。さらには、そのとき班目が持ってきた、深山の活躍で勝訴した裁判を伝える新聞記事に、下村利美子という新日本体育大学の学生が重量挙げで3連覇を達成したニュースも載っています。実はこの新日本体育大学、『ATARU』の女刑事・蛯名舞子(栗山千明)の出身校。さらに蛯名は実はウェイトリフティング部所属という設定だったのですが、その記事には下村が重量挙げを始めた理由として『蛯名の姿を見たこと』がきっかけだったことも書かれています」
 
 また、ジャニーズコラボネタはそれらだけではないという。松本の代表作である『花より男子』(同)をはじめ、細かいネタが仕込まれているようだ。

「4話で、痴漢の冤罪を示談で終わらせた発明家・菊地(板尾創路)が帰路に就く際、『花より男子』でヒロイン・牧野つくし(井上真央)が通う英徳学園のものらしき制服を着た女の子とすれ違うシーンがあります。また5話では、司法試験を20年も落ちているパラリーガル役の明石達也(片桐仁)が深山に対し『俺はな、お前がこんなにちっちゃくて犬連れてる頃から司法試験受けてんだよ』と叫ぶ場面がありますが、ネット上では、まさに約20年前の1997年、まだ14歳だった松本が連ドラ初出演を飾ったドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系)のシーンからきているセリフではないかと話題になりました。これは、木村氏がこの作品の演出助手だったことから入れ込んだものと思われます」

 さらには、深山らと対立する検事・丸川貴久(青木祟高)の持っているファイルの中に「武蔵野第一図書館図書隠滅事件」というレポートがあり、これはV6・岡田准一主演映画『図書館戦争』で起きた事件にあてはまるという。

 もちろん、こうしたジャニーズ関連だけの小ネタにとどまっているのではない。

「1話では名作映画『男はつらいよ』ファン感涙のシーン、2話は約35年前に放映され、いまだに根強いファンを持つ刑事ドラマ『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)でおなじみのあのシーン、4話には山田孝之主演のヒット作『闇金ウシジマくん』(毎日放送)の金融会社の名前がチラリと登場、5話ではケガをして包帯姿になった平田満の顔が出世作の映画を連想させるなど、枚挙にいとまがない。また、斑目の持っているガラケーの着信音は、演じている岸部自身がかつてメンバーだった大人気バンド『ザ・タイガース』の名曲『君だけに愛を』のイントロです。こうした世代を超えた演出が、図らずも高視聴率につながっているのかもしれません」

 さらにこのテレビ局スタッフによれば、同じ日曜劇場で2年前に放送された『ルーズヴェルト・ゲーム』や、木村氏が手がけた遠藤憲一・菅田将暉W主演のドラマ『民王』(テレビ朝日系)といった作品にまつわるオマージュネタや、元フジテレビアナウンサーで現在は弁護士として活躍している菊間千乃さんの著書も、ある回に登場しているという。

「こうした小ネタの過剰挿入に対し、『やりすぎ』『話が入ってこない』『見てて疲れる』という意見もあることは確か。一方、小ネタを入れなければ、単なる『謎解きドラマ』であることは否めない。個人的には『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)にあったような本格的な法廷劇も見てみたい」(同)

 いずれにしても6月19日の最終回(予定)まであと数回。果たして小ネタの嵐は最後まで続くのか? そして、視聴率はどこまで上がるのか楽しみにして見ることにしよう。
(後藤港)

最終更新:2016/06/07 16:34
『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE』
最近、目がかすむもんで小ネタは疲れちゃうのよ
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