【messy】

風俗界の格差が著しい現在、吉原の超人気ソープ嬢はなぜそんなに稼げるのか?

2016/05/05 20:00

 待ち合わせは、東京・青山のカフェ。時間ちょうどにメールが届いた。「いま駐車場に停めたところなので、もうしばらくお待ちください」ーーソープランドのメッカ・吉原のなかでも最高級レベルの店に所属する風俗嬢・愛梨さんにとって、その日は休日。愛車に乗って移動し、都内の一等地にあるジムでパーソナルトレーナーの指導のもと身体をメンテナンスし、取材が終われば再び趣味の習いごとに出かけるという。優雅な暮らしぶりの一端がかいま見えた。

 数分後に現れた愛梨さんは、全身から淡い光を放っているようだった。長い髪もツヤツヤなら、肌もツヤツヤ。季節を先取りしたノースリーブのワンピースの胸元からは豊かな胸の谷間がのぞいているが、際立った健康美ゆえ、同性である筆者の目にもまぶしく映る。これぞ高級ソープのトップ嬢と誰もが納得するであろう愛梨さんに、挨拶もそこそこに「いまは月いくら稼いでるんですか?」と質問をぶつけた。不躾にもほどがあるが、彼女は笑顔を絶やさず答えてくれた。

愛梨さん(以下、愛梨)「月によって差はありますが、ベンツのそんなに上のクラスでないモデルなら即金で買えちゃうくらいですね。一般的な20~30代サラリーマンの年収を軽く超える額を1カ月で稼いだ時期もありますよ。当時は海外旅行に行くのが趣味で、年に3回ほど日本を脱出していたので、そのためのお金が必要だったんです。でも、月に25日もお店に出ると心身に無理がきて、次第に仕事に行くのがイヤになってきて、ひどいときは当日欠勤しちゃうんです。だから、いまは週4~5日のペースで出勤しています」

 女性の貧困、若者の貧困、子どもの貧困が問題視されてひさしいが、持たざる者の窮状は一向に解消されることなく、持てる者との差が広がるばかり。その格差は、風俗業界でも歴然としている。身体を売っても稼げない〈最貧困女子〉たちがいる一方で、愛梨さんのように毎月うなるほど稼いでいる女性もいる。両者を分けるものは一体何なのか? 彼女はルックスがいいから、高級店に勤められるスペックに恵まれているから、という単純な話ではなさそうだ。それを知るため、まずは彼女の風俗嬢としてのキャリアをふり返ってもらった。

愛梨「まだ10代のときに地元でフラフラしていたら、ピンサロのお兄さんに声をかけられて体験入店しました。抵抗はまったくなかったですね。幼いころから性にものすごい興味があったし、もともと人と話すのが好きで初対面の人ともすぐに打ち解けられる性格なので、気づけば自然に接客していました(笑)。1日6~7万は稼いでましたよ。高校卒業後に上京して以降、ヘルスやデリヘルも経験しましたが、ソープランドがいちばん長くて、勤めるのはこれで4店舗目になります」

◎趣味を極めると、仕事もうまくいく

 お店を変わるごとにギャランティをアップさせ、現在のお店でもトップクラスの売上。風俗嬢としてこれ以上ないほどのキャリアを築いている彼女だが、身体を壊して思うように働けなかった時期もあるという。

愛梨「お客さまで心を病んだ方がいて、私に依存してきたんです。そんなにお金があるわけでもないのに、3日に1度は来店されていました。私も影響されてメンタルのバランスを崩し、体調も悪くなって、しまいには入院することに……。そこからは、身体作りに気を配るようになりましたね。この仕事は体力第一。稼ぎたくても、身体がついてこないとどうしようもない。メンタルまで影響されてしまいます。だから食事に気を配り、睡眠をしっかりとって、ジムでパーソナルトレーナーを付けて身体作りをはじめました。私、子どものころは肥満児だったんですよ。マラソン大会もサボるほど運動がニガテな子ども時代がウソじゃないかと思うほど、いまはトレーニングにハマっています」

 現在は、お尻を鍛えるジムと、腕や肩、背中を鍛えるジムに通い、それぞれパーソナルトレーナーを付けている。さらに、「エアリアルティシュー」という、天井から吊るした布を使って行う空中パフォーマンスのレッスンに通っているというから、なんともアクティブだ。全身を使ってパフォーマンスをすることで、プロポーションに磨きがかかった。

 また、趣味と実益を兼ねて撮りつづけているセルフ写真は、某有名美術誌で特集が組まれる(今夏予定)ほどの腕前。好きなことに夢中になって取り組んでいると自然と仕事もうまくいく、愛梨さんはいつしかそんな好循環のなかにいた。

愛梨「身体作りとか写真とか、自分の好きなことをブログに書くと、同じ趣味のお客さまが来てくれるんですよ。海外旅行に行った日記を見て、その国の方が日本にいらしたとき立ち寄ってくださったこともあります。共通点がある方は、リピーターになってくれやすいし、サービス中も話がはずみます。110分という枠のなかで、プレイをしているのはせいぜい30~40分。あとは服を脱ぎながらしゃべって、休憩しながらしゃべってという感じなので、そのおしゃべりが楽しくないと、お客さまのトータルの満足度は下がります。ブログって便利ですよね。興味があること、好きなことを発信していない子は、当たり障りない会話しかできなくて、お客さまの記憶に残りにくいんです」

 それにしても、よく笑う人だ。会話の隙間すべてが明るい笑いで埋められるから、いつまでも話していたくなる。リピーターが多いのもうなずける。そんな彼女を慕い、または目標とし、「どうしたら売れっ子になれるのか?」と助言を求める同業者女性もいる。

愛梨「20歳前後でふらっとこの業界に入ってきて、しばらくはスキルがなくても稼げたけど、25歳ぐらいになるとお客さまはさらに若い子に流れて途端に稼げなくなる。なんとかしたいけど、いままで何もしてこなかっただけに、何をしていいのかわからない……と焦る女の子は多いですね。そんな子には、仕事以外の楽しみを見つけ、週に一度はそれに思いっきり打ち込むようアドバイスします。そしてそれを、どんどん発信していく」

 アドバイスに従い、ポールダンスをはじめたソープ嬢がいる。当初はボディラインがぽっちゃり気味で愛梨さんも「高級店向きではないかな」と思ったそうだが、新たな趣味を見つけた彼女は目に見えて変わった。売れるためではなく、自分がかっこよく踊るために筋トレを始め、食事に気をつけるようになった。ブログにもその様子をつづるようになると、それが接客中の会話の糸口になる。

◎根性出して働いています。

愛梨「自分がいま与えられている仕事を、『私は向いていない』で終わらせるのはもったいない。『私はかわいくないから』『スタイルがよくないから』『お店のプロフィール欄に顔を出せないから』という子もいるけど、いまの時代はそんなの関係ないですよ。自己プロデュースして新規のお客さんをつかんで、LINEなりメルアドなりを交換し、それぞれのお客さまに合った営業をして、リピーターになってもらう。私は、そういう作業を淡々とくり返しているだけです。自分でもそれを楽しんでやっているからぜんぜん苦になりません。誰にとっても自分に100%マッチした仕事ってありませんよね。合わなくても、そこに楽しさややり甲斐を見つけれ自分で工夫するようになります。私は最初からラクして稼ごうなんて思っていないんで、根性出して毎日がんばってますよ」

 それでも、「ルックスがよくて、もともと人好きのする性格って、アドバンテージありすぎ」という人がいるかもしれない。だから高級店に勤められるのだ、と。

愛梨「アドバンテージがあったとしても、それだけではいずれ壁にぶち当たります。大事なのは、経験を積むこと。このお客さまはプレイ重視なのか、それともお年を召しているから会話を楽しんで癒やされたいのか……そういうことを肌で感じるようになるには、場数を踏むしかありません。ただルックスがいい嬢より、口に出さずとも願望をくみ取ってくれる嬢の方が好きというお客さまは大勢います」

 着実かつ堅実に風俗嬢としてのキャリアを積み重ねてきた愛梨さん。「何歳になったら引退しよう」という展望があったわけではない。しかし、趣味に打ち込みはじめてから、別のビジョンが見えてきた。いまの仕事を辞めた後、好きなことを仕事にしていければ……。後篇は、吉原のトップ・ソープ嬢は自身の将来をどう考えているのかをうかがう。
(三浦ゆえ)

最終更新:2016/05/05 20:00
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