『ギャルと「僕ら」の20年史 女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』トークイベントレポ

セックス特集、安室奈美恵、秋葉原――「Cawaii!」元編集者が語る“ギャルブームの盛衰”

2016/04/23 16:00
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(左から)中森明夫氏、松谷創一郎氏、長谷川晶一氏

 90年代、女子高生にまつわるカルチャーや事象が世間をにぎわせていた頃。1996年に主婦の友社からギャル雑誌「Cawaii!」が創刊された。一般の女子高生を読者モデルとして起用するなど、同誌はその後続く“ギャル雑誌ブーム”の火付け役的存在となった。2000年には発行部数が約40万部にのぼるなど最盛を誇ったが、09年に6月号をもって休刊する。

 先日、「Cawaii!」ブームの頃に編集者として携わっていたノンフィクションライターの長谷川晶一氏が『ギャルと「僕ら」の20年史 女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』(亜紀書房)を刊行した。ギャルブームの実態、ブームをけん引してきた歴代の男性編集長、同誌を語る上で欠かせない女性編集者の話、ギャル雑誌を作っていた自身の当時の苦悩や、女子高生素人モデルたちとのストーリー、ライバル雑誌だった「egg」(大洋図書)や後続雑誌「S Cawaii!」との関係性など、「Cawaii!」を巡る20年間の記憶を325ページで綴った力作だ。

 その刊行を記念したトークイベントが下北沢B&Bにて行われ、長谷川氏に加えて『アイドルにっぽん』(新潮社)などで知られるアイドル評論家の中森明夫氏、『ギャルと不思議ちゃん論――女の子たちの三十年戦争』(原書房)の著者である松谷創一郎氏が登壇した。

■知られざるギャル雑誌「GALS LIFE」

 長谷川氏は、「Cawaii!」が休刊すると知った時には、主婦の友社を退社して6年ほどたっていたそうで、「なくなるはずがないと思っていたから、とてもショックだった」と語る。そして、昔の仲間やお世話になっていた人たちに「Cawaii!」がなぜなくなったのか聞き歩いたことから本の執筆が始まったという。「あの時代を思い返してほしいし、知らない人にはそんな時代があったことを知ってほしいという思いがすごくある」と本書執筆への熱い思いを吐露した。

 その舞台となった主婦の友社というと、社名の通り“良妻賢母”的な雑誌を作っているイメージがある。一見、ギャルカルチャーとはかけ離れた出版社とも思えるが、実は同社にはギャル雑誌を作る系譜があった。中森氏は「70年代後半から主婦の友社は『GALS LIFE』というギャル雑誌を出していたが、若い女性のセックスを正面から扱ったため、国会で言及を受けて廃刊してしまった。それからしばらくして、女子高生ブームとともに立ち上がったのが『Cawaii!』だった」と説明する。

 本書にも、当時の衆議院予算委員会での総括質問や、それによって廃刊やリニューアルを余儀なくされた雑誌についても詳しく書かれている。今では当たり前となっている、女性誌におけるセックス特集が国会に取り上げられたという話に、会場に集まったお客さんは興味深く耳を傾けていた。

■“女子”を徹底的に対象化した男性編集長の編集力

 そんな「GALS LIFE」を廃刊に追い込んだセックス特集だが、長谷川氏はこれこそ「Cawaii!」の重要な企画だと語る。「Cawaii!」は歴代編集長が全員男性。「女性の発言権が強かった主婦の友社にあって、その中で男性編集者が自分の立ち位置を作っていくことは入社時からの使命だった。男性には女性誌が作れないといった思考はなく、自分の得意分野を掘り下げた結果、優秀な男性編集者が生まれていった」(長谷川氏)と分析する。その中でもセックス特集では、男性目線でのリアルな内容が、読者の心をつかんでいたのだそうだ。

 中森氏もこの点について「女性誌業界は女性が活躍できる社会であり、同性の声を拾った商品はウケやすい。しかし、『Cawaii!』では優秀な男性編集長が、他者としての女子をメディア化するために徹底的にリサーチしていた」と、性別も年齢も距離がある立場だからこそできた“男性による女子の対象化”が「Cawaii!」の成功の秘訣であると語った。

『ギャルと「僕ら」の20年史――女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』
ギャルは精神性として永遠に続いていくってこと!!
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