映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

自分の“正しさ”へ導く女×拒む若い女――女の上下関係から見る『モナリザ・スマイル』

◎良き妻を目指す女生徒に問いかける「オリジナルな自分は?」
 第二次世界大戦で疲れた男たちを癒やす「良妻賢母」が、女性の生きるべき道と喧伝されていた当時のアメリカ。名門女子大においてそれは顕著で、2人に1人が在学中に結婚し、高学歴は「よい夫」を獲得するためのステップにしか考えられていなかった。

 そんな中、理想に燃えるリベラルな教師キャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)は、美術史の講義を通じて学生の意識改革を促そうと奮闘する。従来の価値観を重んじキャサリンを危険視する教授陣や、小生意気で手強い学生たち、遠距離恋愛の恋人との別れ。試行錯誤の中で、時に自分の力の限界を感じ悩むキャサリンだったが、やがて学生たちはそれぞれに成長し、卒業していく。

 ラストは明るい大団円となっているものの、この作品は、教える立場にある者、教えた経験のある者にとって、ちょっとビターな後味を残す。それはキャサリンの全エネルギーを投入した教育活動が、学生たちの最終的な自己決定に直接影響を与えているようには見えないからだ。教師の思い描くのとは別のところで、学生は自分の生き方を選択していくのだ。ある者は教師の期待に反して。ある者はまったく思いがけないかたちで。

 それに触れる前に、学生との関係の変化がわかりやすく現れているキャサリンの授業の変遷を見ておこう。

 美術史の最初の講義で、テキストをすでに丸暗記し、新任教員の手の裡など見透かしているかのような学生の態度に圧倒された彼女は、次の授業でいきなりテキストにはないスーティンの油絵「骸」を見せる。吊り下げられた牛の屍体を描いたグロテスクな絵にざわめく教室。知識で見るなと言わんばかりの、これはキャサリンから学生たちへの挑戦だ。

 次は校外授業。画家のロフトでポロックの抽象絵画に対面し、筆跡も激しい大画面に息を呑む学生。ここでキャサリンは「解説」をしない。旧来の規範に囚われない新しい世界を、現代アートを通じて体感させようとしている。

 そしてゴッホの「ひまわり」。誰もが知る有名な絵画だが、キャサリンが持ってきたのは元絵をそっくり写せるようにした大衆向けの絵画コピーキット。オリジナルとコピーの関係について考える授業を通して、彼女が言いたかったことはこうだ。どんなに勉強してもそれを活かさず、みんな判で押したように結婚して専業主婦を目指す。そんな「お手本」をコピーするような生き方でいいの? オリジナルな自分は? 彼女は懸命に学生たちのドアをノックし続ける。

 だが最後、見えてこない教育効果に落ち込んだキャサリンが扱ったのは、美術ではなく現代の広告だった。女性を「もっと美しく」「もっとステキな主婦に」と駆り立てる種々の商品の広告写真。そこに現れる画一的な女性像。どんなにドアをノックし続けても、あなたたちはこちらの道を選ぶのね。失望と怒りを隠さない彼女を、学生たちは複雑な面持ちで見つめる。

『正しさとは何か (Thinking about Trurh and Justice.)』
正しさを叫んでも変わらないときは、周りの人を見てみて

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