仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

薬物逮捕された清原和博と、謝罪した清原亜希――元夫婦に見る“漢”という生き物の甘さ

2016/02/11 21:00

 “愛人”の存在を隠さないことが“漢”だと思ったのか、清原はその後も堂々と女性と関西旅行に出かけ、買い物を楽しむ姿が再び週刊誌に掲載された。“夫は有名人、家庭円満”ウリをしていた亜希には大打撃であり、足を引っ張られた形で表紙モデルを降板。また、小さな子どもたちにとっても、父親の不倫をまざまざと見せつけられて、精神的打撃を受けたことは想像に難くない。しかし、清原のオンナ遊びは止まらず、海外に同伴した女性と別の女性との交際が週刊誌で取りざたされたものの、亜希は離婚をすることはなかった。

 そんな中、薬物疑惑の報道が報じられると、亜希は半年後に離婚を発表。オンナ遊びと、犯罪では深刻さがまるで違う。離婚によって、自らのタレント生命と子どもを守ったと考えるのが自然だろう。

 球界のスーパースターから、犯罪者へ。“転落”の原因の1つを、“子どもと会えない寂しさに耐えかねて”とする意見をネットで見た。また、体の入れ墨も、自分と愛する子どもを龍に見立てた、つまり愛ゆえの行動という週刊誌の記事を読んだが、これもまた“漢”側の意見で、ちゃんちゃらおかしい。なぜなら、子どもと会えなくなる、つまり離婚の原因を作ったのは、ほかならぬ本人だし、本当に子どもを愛しているのなら、入れ墨はいれるべきではないからだ。妻や子どもには我慢を強いるくせに、本人は打たれ弱いのが、“漢”の特徴である。

 清原逮捕を受け、亜希は「本当にたくさんの方々にご心配とご迷惑を掛けたことを深くお詫び申し上げます」とコメントを出した。が、私にはこれもおかしいことに感じられる。離婚して他人となった元夫の不祥事に、なぜ今さら元妻が頭を下げなくてはならないのだろう。便宜的なものであることは理解できるが、この謝罪を引き出したのは世間の「“漢”の妻なら、薬物をやめさせるべきだった」という責任転嫁の感情なのではないだろうか。ちなみに薬物依存は病気なので、素人の説得で治るような甘いものではない。

 清原の引退特番によると、現役時代、亜希は食事ノートをつけ(ホームランを打った時のメニューは縁起がいいので、何度も出したりするのだという)、家の問題は全部自分で解決し、野球中継は正座して見るという、正統派の“漢”の妻だったようだ。それは“漢”が名声と収入を稼いでくるからこそ、成立する関係である。

 「いつまでもあると思うな親と金」という諺があるが、妻の“献身”も同じである。迷惑ばかりかける甘ったれはもういない。一時的に露出は減るかもしれないが、厄払いしたと思って、亜希には頑張ってほしいと思うばかりだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/02/11 21:00
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“漢”長渕が義理人情を一切なしでフェードアウトしたの最高~
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