東銀座ウェルズクリニック・大木美佳院長インタビュー

爪の変化は老化より病気を疑え 女性専門医が語る、本当に必要なネイルケア

2016/02/03 15:00

■ジェルネイルは、おすすめできない

――爪の異常から見つかる病気には、どのようなものがあるのでしょう?

大木 患者さんが多いのは水虫ですね。爪の色が変わったり、もろくなったりする症状が現れます。ほかにはジェルネイルによる細菌感染。ジェルネイルのトラブルで変色した爪を「グリーンネイル」と呼びますが、これはジェルネイルの下に入り込んだばい菌が原因で起こるものです。

 ジェルネイルを医師としてあまり勧めすることができない理由は、取り外す時に爪を削る点にあります。ネイルサロンなどでの削り方は、大体が凹凸ができるように削るんですよ。ジェルが剥がれにくくなるように。でもその凹凸に菌が入り込んで、体温で温められることで繁殖していくんです。

 ネイルサロンでは病院のように消毒することはできませんから、爪がばい菌の温床になってしまいます。最近では削り方が少なくても使えるジェルネイルも増えてきているようですが、やっぱり削ることには変わりないので、爪に障害が生じてしまう危険性はありますね。

 あと、ネイルサロンでよくやる「甘皮の除去」は、クリニックでは行いません。甘皮は爪の成長にとても大事な部位なんですよ。甘皮は外界との境になっている部分で、細菌などの外敵が入り込まないためのシールドの役割をしてくれているもの。無理やり甘皮を除去すると、細菌が入り込みやすくなるのです。甘皮がなくなると爪が上に向かって生えてきたり、厚くなってしまう可能性が生じるのです。爪は甘皮と後爪郭(こうそうかく)と呼ばれるもので挟まれて押さえつけられているからこそ、平行に伸びていきます。甘皮の押さえる力を失ってしまうと、上へ上へと盛り上がるように成長してしまうのです。甘皮をとった方がネイルカラーの見栄えはいいかもしれませんが、長期的に続けると爪が変形してしまう可能性があるということを覚えておいてください。

――ほかにも爪に現れる異常というのは何かあるのでしょうか?

大木 縦線以外の異常はすべてが老化が原因のものではなく、何らかの局所、あるいは全身の病気があると思ってください。タンパク質不足や鉄欠乏症、亜鉛欠乏、ビタミンB12不足といった栄養の問題が隠れているかもしれません。また、単純にネイルアートが原因かもしれません。さらに、感染症や膠原病の可能性もあります。乾燥に代表される病気や全身の皮膚病が原因の場合、職業に原因のある場合や、爪を触る癖に関連した爪の変形、爪の根元に腫瘍やイボができると変色や変形を起こす場合もある。爪に異常を来す原因は本当にさまざまなんです。

 どんな病気でも爪に変化を感じたときは「病気かもしれない」と思って、行きつけのネイリストさんではなく、必ず専門医に相談するようにしましょう。

大木美佳(おおき・みか)
東銀座ウェルズクリニック院長。アメリカで美容皮膚を学ぶなど、12年間の海外生活を経験。日本形成外科学会会員、日本皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員。ロート製薬がバックアップしている東銀座ウェルズクリニックでは「女性のための爪専門外来」も開設されている。
東銀座ウェルズクリニック
(橋本真澄)

最終更新:2020/02/04 18:14
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