『本当はエロかった昔の日本:古典文学で知る性愛あふれる日本人』トークショー

「日本人はエロい」は事実? 『本当はエロかった昔の日本』が説く“性に豊かな国”の意味

2015/12/15 17:00
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まんしゅうきつこ氏

 大塚氏は「日本の古典には同母きょうだい間でのセックスと獣姦はダメということは記載されている」と語る。動物と人間、また母親が同じ人間のセックスについてはタブーがあるが、逆に言えばそれ以外はなんでもありだというのだ。また、あの『源氏物語』でさえも光源氏が人妻にも手を出しまくったり、その結果生まれた皇子が即位したりするという堂々たる不倫文学である。大塚氏によれば、平安時代の摂関政治も娘を天皇家とセックスで結びつけ、母方が権力を握っていたわけで、日本では「性」は「生」であり「政」と捉えることができるという。

 しかし、「そのように昔からエロかったのに、なぜ昔の日本人は今に比べると性に厳しかったかのようにイメージされるのか」とまんしゅう氏から質問されると大塚氏は、「人口の一割以下だった近世の武士のイメージが時代劇などで植えつけられたせいなのでは」と説明する。また、外来思想の影響も大きいという。キリスト教が伝来した戦国時代頃になると夫婦は離婚してはいけないという考えが浮上したものの、定着しなかった。キリスト教や古代中国の律令制、仏教のような厳しい性道徳を持つ外来思想が入ってくると、一瞬、厳しい性道徳に傾くが、放置しているとエロいほうエロいほうへ行くのが日本人だと大塚氏は語る。律令制が導入され人妻不倫が罪とされた時は「人妻」という言葉が『万葉集』にうたわれるなどブームになったそうだ。本来、性には厳しいはずの仏教も、日本では男色が認められるばかりか、妻帯もオッケーになった。「昔の日本人が性に厳しかったのは、武家階級などごく一部で、平安貴族や江戸の町人、農民の性はゆるかったはず」という。

 まんしゅう氏は自身のペンネームについては常日頃から「今すぐ改名したいと思っている」と嘆いていたそうだが、今回のトークの端々で大塚氏から「名前も含めて古代的で素敵」と評されていたことで、少し気が楽になったようだった。トーク終盤では、自分の女性器を模ったアート作品を発表し、わいせつ物頒布等の罪等の疑いで逮捕されたろくでなし子氏にも触れ、2人は「今の日本における表現物や言葉に出すワードとして、“ちんこ”はOKで“まんこ”はNGというのはやっぱりおかしい」という意見で一致し、「今の日本人も昔みたいにエロくて別にいいじゃないか」と言わんばかりの空気が、会場に流れていた。

 本書の後半には、日本に幾度となく訪れた「エロの危機」について解説されている。江戸から明治にかけて外国の目を意識した結果、春画や混浴、演劇(歌舞伎)といった習俗や風俗、文化などを日本は自ら弾圧してきた。現代においても「エロはダメだ」「性的なものはけしからん」と一辺倒に批判することで、世の中が明るく元気になるかと言えばそうでもないだろう。節度を持って積極的にエロを尊重してきた日本人が、自ら古き良きエロを取り戻すことで、性にも生にも政にも豊かな国になっていってほしい。本書には、そんな大塚氏の切なる願いが込められている。
(石狩ジュンコ)

最終更新:2015/12/15 17:00
『本当はエロかった昔の日本:古典文学で知る性愛あふれる日本人』
「放っとくとエロくなる一方の日本人」クール・ジャパンのキャッチコピーにどうぞ!
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