プロが教える性教育

「AVはファンタジー」 人気AV男優が語る、性感染症について知る重要性

2015/12/08 17:00

■性感染症のリスクを避けるプロの技

 性器同士の接触だけでなく、男性の精液や女性の愛液を口に入れた際に性感染症に感染するケースもある。AVでは女優が精液を飲む通称「ゴックン」プレイもよく見かけるが、森林さんいわく、性感染症のリスクを避けるため、実際には飲み込んでいないケースがほとんどだという。

「本当に飲む場合、精液を出す男性側は必ず検査を受けています。しかし、検査代で制作コストがかかってしまうので、よほどゴックンをウリにしているパッケージのもの以外、飲み込んでいるように見せる演技のことが多いです。クンニリングスも、たくさん唾液を出して、なるべく愛液が口の中に入らないようにしています」

 全身全霊で快感に溺れているように見せつつ、リスクを少しでも減らすために生み出されたテクは、プロの技としか言いようがない。

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ムータンさんがコンドームのつけ方を実演

 リスクを減らすといえば、性感染症の予防の基本といえるコンドームの装着も重要だ。シルクラボをはじめとする女性向けAVでは必ずコンドーム装着シーンが出てくるものの、男性向けAVではまるで着けていないかのように見える。これも、カメラに映らない位置で素早くコンドームを着けるという男優のテクだ。コンドームの着け方に手間取ってムードが白けてしまったり、途中で外れてしまって青ざめたりという経験をしないようにと、女性向けAVで大人気のムータンさんがペニスの模型にコンドームを装着し、着け方をレクチャー。ちなみに、ムータンさんは巨根のため、Lサイズのコンドームを愛用しているそうだ。

■検査は相手に安心してもらうために受ける

 大盛況のうちに終了後、登壇した男優たちに、イベントの感想や、どうすればもっと性感染症の検査が身近になるか、意見を聞いた。

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吉村卓さん

吉村:僕は自分の事務所を立ち上げ、性感染症予防イベントも行っています。そのイベントでは、検査を受けてきた人には割引サービスもしているんですよ。日本は先進国なのに、性に関する情報は遅れています。若い人にも検査の大事さを伝えたいし、AV男優が言っているとインパクトがあるので、これからも発信し続けたいです。また、検査に保険がきいて安くなればなとも思います。

森林:誰でもセックスをしたら性感染症がうつる可能性があります。必ず一度は性感染症の検査を受けるべきです。アメリカではブライダルチェックとして性感染症検査を受けますが、怪しいことがあるから受けるのではなく、相手に安心してもらうために受けるんです。性感染症は自分には関係ないことではないと思ってもらいたいです。AV男優が性感染症の啓発をすることは、結果的にAV業界のためにもなると思います。

野島:もともと健康オタクなので、健康に関することを伝えられればと思ってイベントに参加しました。性感染症が、がんにつながることを知らない人も多いので。性感染症予防啓発を本気でやるなら、例えば、性感染症検査を受けたらアイドルの握手券をつけるというのも手だと思います。

ムータン:ちょっと気になったら検査を、くらい気軽に受けられるようになってもらいたいですね。また、性感染症の正しい知識を身に付け、日常生活において簡単にはうつらないことや、病気の方に対する偏見や差別もなくなっていってほしいです。

 何千人という女優とセックスをするAV男優。彼らは性感染症のリスクがあるからこそ、一般人以上に性感染症予防・啓発に真摯に取り組んでいるようだ。
(姫野ケイ)

最終更新:2015/12/08 17:00
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