『恋愛しない若者たち』牛窪恵トークイベント

もう結婚に「恋愛は不要」? 牛窪恵が語る、恋愛・セックス観の世代間ギャップのゆくえ

2015/12/12 19:00
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『恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 「最近の若者は恋愛をしなくなった」「性欲がなくなった」などと言われるようになってから久しい。2014年にリクルートマーケティングパートナーズが行った調査によると、「現在、交際相手がいない」と答えた20代は女性で60%、男性では76%に及んだそうだ。また、2015年の内閣府「少子化社会対策白書」によれば、未婚で恋人がいない20代男女の4割が「恋人は欲しくない」と回答。ほかにもこうした「若者は非恋愛主義である」と言わんばかりの調査結果はことあるごとにメディアで取り上げられ、調査対象ではない中年以降の世代がいちいち驚く様子はもはや見慣れた感もある。

 先日、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)への出演などでも知られるマーケティングライター牛窪恵氏による、『恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が刊行された。ここで語られる「若者」とは20代の男女のこと。本書は牛窪氏が、社会構造や消費コンテンツ、さらには識者や若者への取材や定量調査などから若者たちの変容や人生観を分析し、非恋愛時代を生きる彼らの新しい結婚の形を探った恋愛マーケティング本である。

 本書の刊行を記念して牛窪氏と、本書の編集者でありディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長の干場弓子氏によるトークイベントが開催された。会場のジュンク堂書店池袋本店には、若者を子に持つという40~50代男性が多い中、当事者である20代女性の姿も見えた。

 前半ではまず、若年独身男女の意識とトレンドは、時代の景気に大きく左右されることを各世代の恋愛動向とともに説明。牛窪氏自身もそうであるように、現在の40代半ば~50代半ばの世代は青春時代がバブル期であり、当時の爆発的な経済がいかにグルメ、ブランド物、ホテル、スキーなど恋愛消費的なコンテンツを生み出したのかを解説した。

 そして彼らの下の団塊ジュニア世代(40歳前後~40代半ば)、ポスト団塊ジュニア世代(30代半ば~30代後半)と続くにつれて、この恋愛至上主義は崩壊していく。世相が反映されるドラマについても世代ごとに触れ、1996年放送の木村拓哉主演ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)では、彼氏に振られた後に好きでもない男の部屋に「家賃がお得」という理由もあって転がり込むヒロインに言及し、「コスパが良いから一緒に住む」というコスパ優先の現在の居住観の片鱗が、すでに90年代からあったことにも触れた。

 そんな時代の流れの中で、牛窪氏によると今の若者は「恋愛はコスパに合わない」「面倒くさい」と考えてはいるものの、将来の孤独死は不安に思うため「いつかは結婚したい」と、相反する願望を持っているのだという。特に男性が恋愛を面倒くさいと思う理由としては、男女平等教育を受けた半面、デートでは相変わらず男性の経済的負担が多いという男女不平等があること。女性に積極的になろうとしてもストーカーやセクハラといった恋愛リスクを回避しようとするあまり、女性とのコミュニケーションの取り方がわからなくなっていることなどがあるそう。

 今の若者が結婚をしなければ少子化は加速する一方であり、若者が恋愛結婚を望んでいる限り、恋愛は今や日本全体の問題と捉えられている。牛窪氏は、決して「バブル期のように恋愛しろ!」と言いたいのではなく、彼らの考え方や行動を分析しつつ、むしろ自分たち世代が彼らを理解してあげることが大事だと言う。そして多様な価値観や結婚をめぐる新たな法整備に目を向けつつ、「恋愛も結婚も失敗したって大丈夫だよ」と背中を押すような、人生で困った時のセーフティネットを大人たちがいかに用意してあげられるか。「そんな老婆心も込めて筆を執った」と前半を締めくくるかたちで執筆経緯を語った。

『恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 (ディスカヴァー携書)』
老婆心も度を超えるとお節介になるからな……
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