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『相棒14』反町隆史、軽薄さと“やりすぎ”演技が魅力となる「冠城亘」という男

2015/10/31 15:30
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『相棒14』公式サイトより

 水曜夜9時から放送されている『相棒』はテレビ朝日を代表するロングヒットドラマだ。2000年に土曜ワイド劇場で2時間スペシャルとして放送されて以降、02年から連続ドラマとして放送され、03年のSeason3より2クールになり、現在はSeason14が放送されている。

 Season1の平均視聴率は13.1%(テレビリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、メガヒットとまではいかなかったが、毎年続けていくことでじわじわと人気が浸透していった。また、定期的に行われている再放送から入ってきた視聴者も多く、いつしかテレビ朝日を代表する人気ドラマとなった。

 物語は、頭が切れすぎる故に特命係という閑職に追いやられた刑事・杉下右京(水谷豊)が、さまざまな事情で特命係にやってきた“相棒”となる若い刑事とともに、型破りの推理で事件を捜査するバディものだ。今まで寺脇康文、及川光博、成宮寛貴が相棒役を演じ、今回、反町隆史が演じる冠城亘で4代目。成宮が演じた三代目相棒役の最終話が、驚愕のバッドエンドだったこともあって、新シリーズはどう展開されるのか大きく注目された。

 『相棒』の魅力は大きく分けて2つある。1つは1話完結の事件モノとしての練りこまれたミステリーの面白さ。もう1つは、15年という時間をかけて放送したことによって生まれた杉下右京サーガとでも言うような歴史性だ。例えば、右京のいきつけの小料理屋「花の里」の女将・月本幸子(鈴木杏樹)は、元々、右京に捕まった犯罪者だった。しかし、刑期を終えて、何度か再登場するようになり、いつの間にか「花の里」二代目女将となりレギュラーに昇格した。

 こういった歴史性が成立するのは、他ドラマだと『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)ぐらいではないかと思う。15年近い歳月を経たことで、右京は3人の相棒と別れ、宿敵だった警視監の小野田公顕(岸部一徳)も命を失った。毎回同じことを繰り返しているように見えながら、確実に時間は流れているのだ。

 しかし、杉下右京サーガとしての面白さは、初期の『相棒』にあった面白さをじわじわと破壊していった。例えば当初の『相棒』では、犯罪者以上に警察組織が持つ内部の抑圧が、右京の捜査を阻むことが多かったが、今では右京の力が圧倒的になりすぎて、内部の抑圧は物語上あまり機能していない。そうやって物語自体が手詰まりとなった今、登場したのが冠城亘だ。

■反町“らしい”オーバーアクション芝居が引き立つ

 冠城は法務省のキャリア官僚だ。現場に興味を持って、警視庁に出向していた。前回の事件の責任をとって右京が無期限停職処分となっているため、今は無人となっている特命係に居座っている。そこに右京が戻ってきたことから、成り行き上、一緒に組むことになるのだが、いまのところ右京は冠城のことを「同居人」と呼んでいて、特命係のバディ(相棒)といて認めていない。

 キャリア官僚という前情報から、もう少しクールで落ち着いたキャラクターかと思っていたが、冠城は事件解決のためなら手段を選ばずに行動する男で、右京以上に危ない橋を平気で渡る男だった。

 4代目相棒を演じる反町隆史は、90年代にデビューした俳優だ。代表作は『未成年』(TBS系)、『ビーチボーイズ』『GTO』(ともにフジテレビ系)等々。元ヤンキーで軽薄だが生徒たちを思いやる教師を演じた『GTO』は、反町の人気を決定的にした代表作だ。主人公の教師・鬼塚栄吉の軽薄な振る舞いの中にある強さと優しさ、ソフトマッチョな肉体からにじみ出るワイルドな色気は、今の反町のパブリックイメージとなっている。

 しかし、近年は『GTO』のイメージを払拭するような落ち着いた大人の演技も身に着け始めており、『限界集落株式会社』(NHK)で演じた情けない父親役などは見事にハマっていた。そのため『相棒』でも、キャリア官僚の役もあり、エリート然とした役を演じるかと思ったが、ここに来て、再び『GTO』の頃の軽薄さを前面に打ち出す芝居に戻ったことのに、逆に驚かされた。

しかし、多くの視聴者にとっては、「冠城亘」こそが一番見たかった反町なのだろう。冠城の登場は、いい意味で『相棒』世界にとっての刺激となった。重厚で達者な演技が多い中、反町の演技は明らかにオーバーアクションでやりすぎだ。フジテレビのドラマならこれくらいのケレン味は許容範囲だが、シナリオ以外はオーソドックスな映像と芝居が求められるテレ朝のドラマではあまり見ないタイプの演技である。

 冠城は、いつも飄々としており、時にわざとらしい表情で驚いたりするのだが、それは反町の演技がヘタだからではなく、冠城自身が本音を隠して、常に何かを演じているからだろう。もしかしたら、特命係に来たのも、何か別の目的があるのかもしれない。そんな冠城が今後、どのように右京と絡んでいくのか。

 1クールのつなぎ役といううわさもあるが、こういったうわさ話がたくさん出てくるのは『相棒』という作品がそれだけ注目されているからだろう。老舗ゆえに何が起こるかわからない『相棒』世界は、相変わらず健在だ。
(成馬零一)

最終更新:2015/11/02 14:35
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