『この女を見よ 本荘幽蘭と隠された近代日本』著者インタビュー

結婚、男女差、規範を軽やかに突破――女性史に埋もれた本荘幽蘭に知る、“女”の超越

◎男性からは“ゴシップの対象”、女性からは“無視”された存在

――なぜそんなにも男性たちは、幽蘭に惹きつけられていたのでしょうか?

江刺 たとえば阿部定事件というのがありましたね。2・26事件が始まる直前の事件で、日本全体が閉塞的な空気の中で、猟奇的な部分と、好きでたまらないがゆえに男を殺してしまうという究極の自由奔放さが興味を持たれたんでしょうね。戦後になっても、映画になったり、男性の書き手がよく取り上げています。

 ずっと遡って明治の初め頃の新聞も、事件を起こした女性を「蝮(まむし)のお政」とか「鳥追いのお松」といったものすごいあだ名をつけて、面白おかしく書いています。つまり、男を翻弄したり人を殺したりする女性は、常に「悪女」とか「毒婦」というくくりでスキャンダルにさせられてきました。そうやって彼女たちは、永遠に語り継がれるわけです。男性は「悪女」や「毒婦」が好きなんでしょうね。ただ幽蘭は罪は犯していないから、「悪女」でも「毒婦」でもない。彼女自身には嫉妬や憎悪といったじめじめした部分がないのがまた変わっているところです。

――18回も結婚したり、当時にすると相当に奔放な男性遍歴ですが、女性からのバッシングはなかったのですか?

江刺 さまざまな本や新聞を調べましたが、当時彼女のことを論じた女性はほとんどいません。「新しい女」と言われた同時代の「青鞜」同人でさえ、まったくの無視でした。新聞にはやたらと出ていたので、存在を知らないはずはない。つまり、女性の活動家たちにとって、幽蘭と自分は生きている地平が違うから論じるに値しないと見ていたんだと思います。幽蘭をはやし立てる男性と幽蘭にまったく触れない女性という違いも、また面白い点です。

――当時のリアルな女性像とも、「青鞜」が掲げていたような男性と平等である女性像とも違っていたので、どう論じればいいのかわからなかったのでしょうか。

江刺 そうですね。当時は男女差別が大きく、女性は常に男性から支配される対象でした。女性には選挙権もなければ財産権もない。第二次大戦後に日本国憲法で男女平等が定められるまで、日本には姦通罪がありました。人妻がほかの男性と通じたら姦通罪に問われたけど、男性の方は同じことをしても罪にならない。つまり性の二重基準(ダブルスタンダード)があったわけですね。男女平等の制度を求めていた青鞜社員も、吉原を見学したりカフェでカクテルを飲んだりしたことでバッシングを受けたほど、当時は女が何か言挙げすると潰されていました。

『この女を見よ: 本荘幽蘭と隠された近代日本』
女より人間として、自分として生きる強さをつかむ

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