爆発的ヒットの裏側を検証

白斑問題から学ぶこと――コンプレックスを刺激する広告と距離を置き、冷静な想像力を持とう

2015/10/04 16:00

◎消費者に求められる想像力

 シミ・ソバカスができた肌を直ちに均一に白くする商品があったら、というのは女性の夢である。また、そういう女性心理を煽る広告があるのも事実。しかし、実際に美白化粧品を使って本当に肌が白くなったと感じている方がどれくらいいるだろうか。化粧品の範疇で、安全を一番に考えたら、急な効果が出るような商品は、リスクが高すぎて一般的にはつくれないだろう。

 カネボウの白斑事件では、シミの原因となるメラニン色素を生成するメラノサイトを破壊する作用が強すぎ、白斑を引き起こしたと言われている。仮に、今回のようにまだらにならず、塗ったところが完璧に白くなったとしても、塗りむらや、塗らないところとの差が出てきてしまうだろう。それは本当に美しいと言えるのだろうか。

 自分の持っている肌色で一番くすみのないキレイな状態を知る、ということは実はとても大事なことだ。風呂あがり、十分な睡眠をとった翌日、運動をした次の朝など、自分がキレイな肌色(透明感)だと思った日の肌を覚えておいてほしい。本来の自分の肌色でベストな状態が、自分にとっての美しい肌の色ということだ。

 また、顔は細胞でできている以上、場所によって――例えば目の周りの薄い肌と、頬の厚みのある肌など――肌の厚さや状態が異なるので、そこに均一な効果を与える商品はほぼ皆無だというのは、広告から一度離れて冷静に考えればわかること。そのような冷静な態度と想像力を働かせることが、消費者のコンプレックスを煽りすぎるような広告から身を守る術になるだろう。

 「元の肌色を根本的に白くする」ことと、「肌の透明感を引き出す」というアプローチは似ているようで大きく違う。前者は自分の持っている肌色を白くするために、メラニン色素にアプローチし肌色をコントロールする考え方。しかし、この方法で実際に目に見えて効果が出ているということは逆にリスクもある。後者は自分自身の肌の滞りを解消することで、もともと持っている肌の透明感を引き出すという考え方だ。化粧品だけで美を完成させようとせずに、食べ物、運動、マッサージなどを見直し取り入れることになる。まずは、自分自身の肌と向き合い、どちらのアプローチで美しくなりたいのかを自問してほしい。

 白斑問題の原因はもちろんカネボウのツメの甘さにあるが、知らず知らずのうちに消費者が化粧品に効果を求めすぎていたと気づかせてくれたことこそ、皮肉にも白斑問題が教えてくれたことだと言えるだろう。

恩田雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトのほか、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事の執筆も行っている。
■公式ホームページ「オンダメディア」

最終更新:2019/05/22 20:27
ウソをつく化粧品
コンプレクッスを自分で飼いならさないと、企業の喰いものにされる世の中ですから!
アクセスランキング