「泣いてはいけない」「水禁止」ビビアン・スーが妄信する、産後ケア「月子」に賛否両論

2015/09/15 19:14
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無事出産を終え、ハーブと生姜で煮たお湯で入浴したというビビアン・スー

 かつてお笑いコンビ・ウッチャンナンチャンの南原清隆、キャイ~ンの天野ひろゆきと「ブラックビスケッツ」を結成し、日本でも人気を博した台湾出身のビビアン・スー(40)。そんな彼女が162日ぶりに入浴したことを公式ブログで伝え、話題となっている。

 8月13日に、シンガポールの病院でめでたく第1子を出産したビビアン。毎日フェイスパックをして、体には4カ月の間に妊娠線防止クリームを18個も使ったなど、前向きな妊婦生活をブログで公開していたが、その実態は過酷だったようだ。

 妊娠3カ月でウイルス性胃腸炎のため緊急入院したのをきっかけに、40歳の高齢出産ということもあり、そのままほぼ寝たきり生活へ。出産までに、流産を防ぐツボに300回もはりを打ったという。32週目に帝王切開で2,000gの男児を無事出産した後は、「月子(ユエズ)」と呼ばれる中国の伝統的な“しきたり”に従って休養している。

 ブログに添付された写真に写るのは、黒みがかった茶色の水が入った青いバケツ。ハーブだけでできた入浴剤と生姜を1時間半煮込むことで完成するという、産後女性のための特別な“お湯”だ。ファンたちは「元気になってよかった!」とエールを送ったが、茶色のお湯を見て「びっくりした! 体が汚れてて、お風呂の水がこんなになっちゃったのかと思った」という人も。一方、同年代の主婦層などからは「おいおい、いつの時代の人? バカみたい」「いくらなんでもやりすぎ!」といった批判の声も上がっている。

 中国文化における産後の「月子」というのは、少々厄介だ。出産後の回復期6週間を「月子」と呼び、滋養のあるものを食べるなど産後の体を心身ともに養うのだが、この時期にしっかり休まないと、その後の体調に大きく影響すると、多くの中国人は信じている。2000年前からある伝統といわれ、あれこれと細かいタブーがある。

 最もよくいわれるのが「水に触れてはいけない」というもの。「体を冷やすな」という意味の派生だが、伝統的には「1カ月は入浴すべきでない」といわれており、現代でも産後1週間は入浴しないのが一般的だ。なお、間違った方向の解釈では、水に触れないように「歯を磨いてはいけない」という人さえいる。ほかに「1カ月は外に出てはいけない」「風に当たってはいけない」「泣いてはいけない」などがあり、食べ物についても同様に、あれを食べろ、これを食べるなと細かな規則がある。

 ビビアンは盲目的といえるほどこれらの規則を守っているようで、風に当たらないようにしっかり着込んで外出したり、息子の腕に点滴などの管が刺さっているのを見て「泣いちゃダメだとわかってるのに、泣いてしまうのね」などと記している。

 中国の場合、一人っ子政策のため、一生に1回しかない「月子」はイベント性が高く、都市部のOLなどにおいては、この期間をリッチな専門施設で過ごすのがもはや一般的だ。施設はナース常駐24時間体制で新米ママと赤ちゃんの世話をしてくれるほか、体の回復に効く食事、スリムになるためのフィットネス教室などもある。

 費用が6万元(約120万円)の5ツ星ホテル並みの施設も珍しくなく、最高級レベルだと100万元(約2,000万円)超えも。中国バブル絶頂の時代には「金持ちが愛人に、こっそり子どもを産ませるための場所」という意味合いもあったようだ。

 欧米では、出産の翌日には病室から出されることも珍しくない。中国人が「月子」を大事にするのは、表向きの「体を大事にする」という理由に加えて、子どもを産むことで家の中でのステイタスが確立され、一生で最も優遇される時間という面もある。とはいえ、この風習には、中華圏でも賛否両論が渦巻いている。
(取材・文=ルーシー市野)

最終更新:2015/09/15 19:18
『本当は怖い日本の風習としきたり』
2000年前から、というフレーズはクるわ
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