仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

ヒロミの“愛妻家キャラ”はなぜ賢いのか? 坂上、有吉、マツコら毒舌タレントとの違い

2015/08/27 21:00
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「てめえ、このやろ~」で一世を風靡

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「1人で決める」ヒロミ
『アナザースカイ』(日本テレビ系、8月21日放送)

 坂上忍、有吉弘行、マツコ・デラックス。今やテレビで見ない日がない、毒舌タレントたちの共通点は何かと言えば、「妻子を持たない」ことである。バツイチである坂上は再婚しないことを公言しているし、有吉は「他人の人生なんて怖くて背負えない」、マツコ・デラックスは「ゲイでなくても、結婚していなかったと思う」と結婚について語っている。

 「結婚して子どもを持って一人前」という価値観がいまだ根強い日本において、本人の意思であろうとなかろうと、1人を貫くことは「変人です」と言っていることと等しいが、毒舌タレントにおいて変人であることは、“逃げ”につながる。彼らの発言が偏狭すぎたときに、「変人だからね」と視聴者に対して一種のガス抜きの役目を果たすのである。

 そんな中、妻子を持つ毒舌系タレントが帰ってきた。ヒロミである。暴走族出身で、90年代には「てめえ、このやろ~」が口癖の傍若無人なキャラとして大活躍したが、ここ10年は芸能界から遠ざかっていた。復帰にあたり、ヒロミが前面に押し出したのは、妻・松本伊代を愛する愛妻家としての一面である。

 日本では内情はどうあれ、妻を愛していると公の場で発言する人は少ない。が、ヒロミは伊代を「ママ」と呼ぶことをはばからない。かつて『有吉ゼミ』(日本テレビ系)では、ヒロミから週に一度はデートに誘う、子どもを学校に送ったついでに、外で一緒に朝食をとるといったエピソードを明かしていたが、ヒロミの最大の“勝負ネタ”は、「料理下手な伊代をうとましく思わないこと」ではないだろうか。

 伊代は料理が苦手で、結婚以来作り続けている朝食の目玉焼きさえ、クオリティが安定しないそうだが、ヒロミは「おいしいものが食べたいときは、外に行けばよい」と特に気にしてない様子である。

 婚活時、そして結婚してからの夫婦円満のコツについて、日本の女性カウンセラーは「女性の手料理」の重要性を説き、そのため多くの女性は「料理を作っていれば、妻として夫から愛される」と思い込んでいる。そんな中、「きちんと義務(料理)を果たしているはずなのに、夫からの見返りがない」と感じている妻にとって、義務(料理)を果たさずに愛される伊代は理解しがたい存在だろう。

『松本伊代 Best Selection』
「俺の女を泣かすんじゃねえ」と子どもを叱るエピソードも鉄板ネタ
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