[女性誌速攻レビュー]「DRESS」8月号

読者層の“管理職”は本当にいるのか? 「DRESS」スナップ特集に見た働くアラフォーの現状

2015/07/16 17:00

■都心部と地方の働くアラフォー像

 折しもこの号では「街コレ・2015夏」と題して、東京、大阪、神戸、名古屋、金沢、福岡の街で撮った「街で見かけたお洒落な女性」のスナップを180体も掲載、それぞれの名前、年齢、職業がプロフィールとして紹介されていました。このスナップに選ばれた女性は、ファッション的には「DRESSな女」のお眼鏡にかなった人たちであるわけです。スタート時は、バリキャリの管理職女性をターゲットにしているように思われた「DRESS」ですが、実際の「DRESSな女」たちはどんなお仕事をしているのでしょうか。

 実際に見てみると、ヨガインストラクターやエステティシャンといった女性が活躍していそうな職業から、「ナンタケットバスケット講師」という「なんだそれ?」なお仕事まで、個性豊かに取りそろっておりました……と言いたいところなんですが、「主婦」「会社員」という、詳細のわからない書き方を除けば、圧倒的にアートやデザイン、そしてアパレル系が多い印象です。

 ファッションブランドのデザイナーやバイヤーが多く掲載されていたのは、やはり街で見かける「DRESSな女」はファッション関係のお仕事をしていました、ということなのか、普段編集部とおつきあいのあるファッションブランドを街で見かけたふうを装って掲載したのかは不明なので深く考えないことにします。それより気になったのが、事務系のお仕事をしている人が医療事務1名のみだったこと。事務職の女性は「DRESS」的じゃなかった、ということなのかもしれませんが、うがった見方をすると、事務職系は全て「会社員」という言葉に集約されているような気がしました。

 また、「会社員」の実数を数えてみると、こんな発見も。東京は36人中、会社員は1名に対して、名古屋は18人中会社員6名、大阪は18人中会社員1名、神戸は18人中4名、金沢は16人中会社員4名と、地方の方が「会社員」の肩書が多い。「会社員」が全員平社員ではないとは思いますが、女性の昇進に力を入れている企業ですら管理職が10%であることを考えると、「会社員」の中にどれだけ管理職の女性がひそんでいるかは推して知るべし……。会社員に主婦の肩書を含めると、東京・大阪以外の地方では半数近くが、いわゆる創刊時に狙っていた「DRESSな女っぽい」職業ではない=管理職ではないということが浮き彫りになってきます。

 「今月の女ジャーナル」から思い立って眺めてみた180名SNAPのプロフィール調査。思いがけず「女性の職業分布図」みたいなものが見えました。

 東京・大阪には、デザイナーや講師業といった自営業の人が多く、地方に行けば行くほど(といっても掲載されているのは都市部ですが)、職業にバリエーションがなくなっていく。そして都心部では、女の出世の道が閉ざされている企業から飛び出して自営業を営み、地方では会社員として企業に勤めている――それが「DRESS」の、ひいては働くアラフォーの実状なのかな、と思いました。

 スナップを見てみると、「AERA」の編集長と肩を並べそうな大手企業の管理職という肩書の人は、あんまりいなさそうです。ゆえに、「DRESS」読者にとって彼女の話は別世界すぎる。それが、連載が打ち切られた要因なのかもしれません。
(増井涼子)

最終更新:2015/07/17 13:14
『DRESS(ドレス)2015年08月号[雑誌]』
そもそも秋元康、松浦勝人、見城徹、藤田晋が経営陣だったもん
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