[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」8月号

「CLASSY.」のカジュアル路線が男にもたらした、「誘いやすい!」と「やる気ない?」の逡巡

2015/07/11 16:00

 ファッションも恋愛もガツガツしたら負け、こんな価値観は今号の着回し企画「楽ちんオシャレアイテムで7月の着回しDiary」にも如実に表れています。美容師である主人公が勤める南青山のサロンに突然やってきた、七三分け・三つ揃いスーツ・牛乳瓶メガネの紳士。場違いな様相に加え「O, how this spring of love resembleth. The uncertain glory of an April day.(恋の始まりは晴れたり曇ったりする4月のようだ)」と、シェイクスピアの一節をブツブツと呟くデンジャラスっぷり。普通であれば“なんかヤバい客が来た”で終わるお話ですが、主人公のゆるカジュアル女子は「あの服装、あの髪型! シェイクスピア専攻の先生と聞いて納得。時たま英語で呟いていたのも、そういうことだったんだ!!」とまさかの受容。しかしこんなあからさまな研究者、イチローがユニフォームを着て街を歩いているようなもんですよ。ニッチロー’か!

 この堅物先生と美容師さんのデコボコラブストーリー、最終的には「ワタシは変わりたい!」という先生のイメチェン宣言により、堅物から単なるイケメンに早変わり。それを満足そうに見つめながら「私のために変わろうとしてくれた先生の気持ちが嬉しかった!(中略)でも先生、見た目じゃなくて、好きなのは中身なんだよ」と語る主人公。ウブなイケメンの原石を自分好みに変身させる、楽ちんカジュアルに潜む強かな女の本性見たり。ただ一言、堅物先生に申し上げたい。アンタの七三魂はそんなもんだったんかい!

■「花柄ワンピ=マウンティングしそう」って浅すぎるだろ

 そんな“楽ちんカジュアル・内心ギラギラ女”が素直な男を懐柔する「CLASSY.」的寓話を真っ向から否定するのが、「『誘いやすい!』と『やる気ない?』の境界線を考える」という企画。説明不要「CLASSY.」の裏スポークスマン、男性ホンネ座談会です。なんでも「カジュアルが流行になってから、誘いやすくなったという男のコが多数。でも、出会いの場所で、あまりにもカジュアルすぎると『やる気ないの?』と思ってしまうみたい。難しい男ゴコロのさじ加減を探ってきました」とのことです。ここは1つ、心を無にして読みましょう。

 男とはまぁ勝手にいろいろなことを決めつけているもんだな~とあらためて気づかされたこの座談会。【平日服】と【週末服】の2つのシーンでその境界線を探っているのですが、「花柄のワンピースとか、コンサバっぽい服を着ていると、きっと高いレストランとかに連れて行かなきゃいけないんだろうな~と思ってちょっと構えちゃう」「スニーカーやダメージデニムとかで来られると、ちゃんと仕事しているの?となんだか不安になる」「(激しいダメージデニムは)貧ぼっちゃまみたい(笑)。近所のコンビニに行くのが限界なアイテムだと僕は思います」と終始心配しっぱなし。そもそもいくらダメージデニムといえども、貧ぼっちゃまみたいにケツ丸出しではなかろうに!

 デニムやスニーカーなどの「CLASSY.」イチオシアイテムへのこき下ろしも然ることながら、さらに矢面に立たされているのがフェミニン系ファッションです。「花柄のワンピとか着ていたりすると、なんか面倒臭そう、私が一番よ!みたいな感じがしちゃう(笑)」「マウンティングしてそうだよね(笑)」「SNSの更新率も高そうだわ~。夜景バックの自撮りで」など、いわれなき中傷の連続。一方で「そう考えると白パン×シャツのコーディネートをさらりとやる人って、マウンティングしてなさそう(笑)」と、こうなるともう「マウンティング」って言いたいだけのような気がしてきました……。

 女の子のファッション1つにさまざまな思いを巡らせ、勘繰り、自らを傷つかない方向に持っていく男たち……。これが男女逆ならば「あぁファッションセンスないんだな」で済まされるところですが、男の子は女子ファッションの裏に深い意図があるのではないかと考えてしまう生き物なのでしょう。「誘いやすい!」と「やる気ない?」の間にあるのは、繊細な男子たちのそんな自尊心なのかもしれません。
(西澤千央)

最終更新:2015/07/11 16:00
CLASSY.(クラッシィ) 2015年 08 月号 [雑誌]
ブログによると、ニッチロー’はユニフォーム姿でバンジーに挑戦してたで!
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