介護をめぐる家族・人間模様【第55話】

「男性ヘルパーはかわいがられてナンボ」おばあちゃんからの視線が重い介護士

2015/06/27 19:00

■暴言を吐かれると病気だとわかっていてもヘコむ
 いい子だ。こんなに若くてやる気にあふれた介護士さんがいたら、おばちゃんスタッフやおばあちゃんの利用者さんはかわいがってくれるだろう。

「女性の利用者さんが9割なので、確かにかわいがられているという自覚はあります。『ゆうちゃん』と呼んでくれるし『かわいいねえ』『かっこいいお兄ちゃんが入ってよかった』とも言われます。今までで一番モテていると思う(笑)。正直、そんな期待や視線が重いこともあるし、プレッシャーも感じます。それでも介護士は好かれてナンボ。好かれるか、嫌われるか、無視されるかだったら、好かれるのが一番じゃないですか」

 どこまでも前向きな熊谷さんだが、嫌なことももちろんある。

「やっぱり便の処理はいまだに苦手です。最初は吐きそうになりました。このあいだ、父が入ったトイレの後が臭いと母が文句を言っていましたが、そんなの仕事に比べれば全然ですよ。思わずそう言ったら、両親も苦笑していましたけどね」

 認知症の利用者さんに暴言を吐かれることも、熊谷さんにとっては慣れないことの1つだという。

「理由もなく不機嫌になられたり、暴言を吐かれたりすると、病気のせいだとわかっていてもヘコみます。僕は弱虫だから、辞めたいという気持ちが一瞬よぎることもある。つい、洗い物をいい加減にしたりして手抜きしてしまうこともあります。でも、やっぱり逃げたらいけないと思うんです。今日元気で来ていた利用者さんが急に亡くなって、次にはもういらっしゃらないこともあります。いつそんなことがあってもおかしくないのだから、今、目の前にいる利用者さんを大切にしたいと思います」

 EXILEのファンだという熊谷さん。将来の夢は、と聞くと、EXILEのように「愛と夢と幸せを与えたい」とこちらが照れるような言葉を返してくれた。利用者さんだけではない。介護が、熊谷さんも幸せになれるような仕事であってほしい。

最終更新:2019/05/21 16:00
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