[連載]おばさんになれば"なるほど"

60代女性がジャニーズアイドルに見る景色――「青春の疑似体験」でも「欲求不満」でもない

2015/05/24 16:00

「SMAPって、Sさんにとっては子どもくらいの年齢じゃないですか。可愛い息子を見るような感じ? それとも若い頃に戻っている気分?」
「うーん、どっちも違うかな。とにかくカッコいい、それだけ。あとグループとしての良さと個人のカッコ良さの両方を楽しめるのもいい」
「もう20年来のファンですよね」
「若い頃はお金がなかったから、コンサート行きたくても行けなかった。子どもも小さかったしね。今はスケジュールやりくりして、1人で北海道までおっかけたり神戸まで行ったり。このために働いてるんだって思う」
「ファン仲間との交流はどうですか」
「やっぱり嵐のファンはすごいよ、情報のネットワークが。私はたまたま友達にチケット取ってもらって行けた。前は娘と行っていたけど、今は同世代の仲間で行くことが多いかな。今度どこそこでコンサートあるから行こうよとか、連絡取り合って。みんなどんどん歳とっていくでしょ、そういうのが一種の安否確認にもなってるの」

 彼女の話を聞くまで、私はちょっと誤解していました。

 今でこそ若い男の子はとてもオシャレになって、クラスに1人や2人アイドルみたいな感じの子がいたりするのかもしれませんが、50代以上の世代の学生時代は全然違います。身近の男子とテレビに出てくるアイドルとは、雲泥の差だった。だから当時は味わえなかった青春を、今アイドルのおっかけをすることで疑似体験しているのではないか、若さを取り戻そうとしているのではないか、と穿った見方をしていたのです。

 しかしSさんにとってアイドルファンであることは、「今を生きる」ことそのものでした。そのために仕事を頑張り、友人との絆を繋ぐ。そして、「今を生きる」アイドルたちと共に1年1年歳を重ねていく。

 ただ、SMAPについて語るSさんの、若々しくキラキラした表情を見ると、やっぱりアンチエイジング効果はあるようです。

大野左紀子(おおの・さきこ)
1959年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻家卒業。2002年までアーティスト活動を行う。現在は名古屋芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。著書に『アーティスト症候群』(明治書院)『「女」が邪魔をする』(光文社)など。共著に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社)『高学歴女子の貧困』(光文社新書)など。
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最終更新:2019/05/21 16:53
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