『私の体がワイセツ?! ―女のそこだけなぜタブー―』刊行記念

「まんこと言えない刑事が可愛かった」ろくでなし子×岩井志麻子が、アノ逮捕劇を語る!

2015/05/30 19:00
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『私の体がワイセツ?! ―女のそこだけなぜタブー―』(筑摩書房)

「刑事の『これはわいせつです』みたいな検分書を見せられたんですけど、そこにはさっきの『スイーツまん』について『女性器の詳細露骨な形状と認めたので、本官はわいせつであると判断した。以上』とか書いてあって。これを見て成年男子がどのぐらい勃起したとか、何ミリリットル精液が出たとか、そういう科学的な根拠があればまだわかりますよ。でもそういうことを示す資料は一切なくて、ただ『女性器の詳細露骨な形状と認めたので、本官はわいせつであると判断した。以上』って書いてあるだけで。今、手元に刑事訴訟記録が全部あって。いろいろな関係者の供述調書とか、警察が私のまんこのデータをプリントアウトしたものとかがあるんですけど、全てが壮大なギャグで(笑)。これ、全部公開したいんですけど、公文書なのでそういうことができないんですよ。でもこれ、一種のアートだと思うんですけど」(なし子氏)

 警察は、なし子氏の作品が「わいせつである」と判断して逮捕したわけだが、その定義は曖昧であり、過去の事例に鑑みても「スイーツまん」がわいせつ物に当たるのか疑問が残る。4月15日に東京地裁で開かれた初公判で、なし子氏は「私のアート作品はわいせつではない」と無罪を主張。意見陳述では「ユーモアあふれる楽しい作品を作ることで、セックスやひわいなイメージを払拭したかった」と述べた。また、公判後には「表現をしたい人には怖いこと。こんなに恐ろしいことがあってはならない」と語っている。弁護側も、わいせつを取り締まる刑法175条の規定は「表現の自由や知る権利を侵害して違憲」と主張している。

 作品がわいせつか否か、裁判所の判断が待たれるところだが、「表現」という意味では、なし子氏はこの騒動によって新たな表現のテーマを得たことになる。岩井氏は、漫画家・花輪和一氏が銃刀法違反などの罪で実刑判決を受け、出所後に発表した作品『刑務所の中』(青林工藝舎)の例を挙げ、「花輪さんやろくでなし子さんみたいに自分の体験を面白がって漫画に描いて、物語にできる人が捕まってくれたおかげで、私たちはおもろい作品を読める。作者には申し訳ないけど、よくぞ捕まってくれたなと思って」と、なし子氏の今後の活動に期待を寄せるとともに激励した。そして、ワインを酌み交わし、「ろくでなし子さんには、まんこの神がついてるんですよ(笑)」「でもこれは本当に得難い体験ですよね。まんこの神が、あなたを選んだんですよ」と、「まんこの神」を崇めるように、よく通る声で連呼していた。

 なし子氏によれば、勾留中は、5人部屋に1本のボールペンしか与えてもらえず、また連日の取り調べで、文章を書く時間も非常に限られていたという。

「あそこでは、警察が私の記憶力・文章力をトレーニングしてくれた。あそこにいると、ものすごく少ない時間でしか書けないんですよ。だから暇な時間に構成を考えるわけですよ。これを書こう、あれを書こうと。ああいう状況に置かれると、人間って何でもできるんだなと思いました。やる時はやるんだなと」(なし子氏)

 この逮捕騒動や勾留生活の一部始終は、5月20日に発売のエッセイ『私の体がワイセツ?! ―女のそこだけなぜタブー―』(筑摩書房)に記されている。まだまだ、なし子氏の戦いは終わらない。1審だけでも1年はかかると見込まれている。なし子氏と岩井氏は戦いの英気を養うべく、その後もワインを酌み交わし“ちんまん談義”を延々と続けた。果たして「まんこの神」は東京地裁に降臨するか、裁判の動向が注目される。
(安楽由紀子)

ろくでなし子(ろくで・なしこ)
漫画家。まんこ(女性器)をモチーフに作品を作るアーティスト。2013年秋、まんこを3Dスキャンし、そのデータで今性器(世紀)初のマンボートを制作、たまん川(多摩川)にて進水を果たす。その制作費用に利用したクラウドファンドで、出資者へのお礼に3Dデー タ をダウンロードできるURLを送信したことなどが要因で、2度にわたり逮捕される。15年3月、米国ニュースサイト「artnet news」 にて “社会のタブーを打ち破る10人の女性アーティスト”に、同月、イギリス「LIBERTINE」誌の“LIBERTINE選アーティスト100人”に選ばれる。

岩井志麻子(いわい・しまこ)
作家。岡山県生まれ。1999年『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店)で日本ホラー小説大賞を受賞し再デビュー。エロと恐怖を本音で語る最凶オバハンキャラとして活躍中。『5時に夢中!』(TOKYO MX)の木曜レギュラー。6月5日(金)、7月4日(金)に、渋谷ユーロスペースにてトークイベント「韓流アフタヌーン」を開催。詳しくは【ユーロライブHP】にて。

『私の体がワイセツ?! ―女のそこだけなぜタブー―』
「ワイセツ」裁判を闘うアーティスト・ろくでなし子氏が、事件と半生を描く抱腹絶倒エッセイ。留置場での体験を振り返りながら、「女は誰もが持っているまんこを作品にすると逮捕される」という世の中のおかしさに迫る1冊。

対談全文はコチラ

最終更新:2015/06/01 13:18
『私の体がワイセツ?!:女のそこだけなぜタブー(単行本)』
いまだかつてない「まんこハイタイム」でした
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