[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」4月28日号

現役か、降りるか……「婦人公論」世代が直面する、自身の中の「女」との向き合い方

2015/04/27 15:50

 そして満を持して登場する須坂エクササイズのアンセム「おさるのかごや」体操。「エッサ」で右手と左足を上げ、「エッサ」で左足と右手を上げ、「おさるの」で骨盤押さえて内股、「かごやだ」でガニ股……これを「動作は大きく丁寧に」「できるだけ大きな声で」「ひとりではなく、仲間とワイワイ一緒に楽しむ」って、いろんな意味でハードル高い! さらに歌いながら“しりとり”まで加えれば長寿脳まっしぐらだそう。「エッサ エッサ エッサホイサッサ」「サメ」「おさるのかごやだホイサッサ」「酒」……「サ」ばっかりやんけ! 中年女性が「おさるのかごや」で歌い踊り、しりとりで悶える様子はさながら雨乞い。年月が奪った体の潤いを「おさるのかごや」で取り戻すのです。EXILEのHIROが新しい商売の匂いを嗅ぎつけそうな斬新エクササイズでした。ホイサッサ。

■「金」だけを求め続けた後妻のプロ

 続いては、ルポ「関西発・女の事件簿」から「後妻業のプロ、『筧千佐子』という女」。去年、夫を青酸化合物で殺害した容疑で逮捕された筧千佐子被告(68歳)の素顔と、「後妻という立場におさまり、夫の遺産を相続するその“手腕”」に迫ったルポルタージュです。これまで千佐子被告に関わって不審死を遂げた高齢男性は10人以上。「後妻業」という言葉が広く世間に知れ渡りました。

 記事とともに“連続不審死事件”の経緯を追った年表が掲載されていますが、これがすごい。2002年あたりから年2人のペースで男性と内縁関係を結び(同時期に2人のパターンも)、死亡→相続を繰り返しているのです。10年以上ここまで派手にやらかして、よく露見しなかったですね……。

 地元の進学校から都市銀行に就職、24歳で最初の結婚。しかし「お金がないって、こんなにつらいことだとは思わんかった。寝る前に手を合わせて、お金、お金って祈ったほど」最初の結婚で貧乏暮らしを味わったという千佐子被告。それが尋常ならざる“金への執着”につながったのか。結婚相談所に高齢の男性を紹介してもらう→デートを重ねて資産状況や家族構成をチェック→同棲、というパターンなのですが、結婚相談所によると「高収入で身寄りのない人、病気持ちでも10歳以上年上でも構わないと珍しい条件を提示していた」そうで、千佐子被告の意図が見え見え。怪しまなかったのか、結婚相談所。それともそういう人、結構いるの?

 計8億円を超す遺産の大半を「株や先物取引に使ったと言われている」ようですが、記事によると「相続で得た金の多くを投資にまわしたあげく、失敗している」ようで、なんとも虚しい話です。それだけのお金があれば悠々自適に生活できるはずなのに、あればあるだけ不安になるのがお金の恐ろしいところ。「男性には徹底して尽くし甘える。もちろんセックスはします。愛し合っていたら当たり前や。年寄りやからって、馬鹿にしたらアカンで」「もし相手が死んで、うち一人で生きていくとなったら、貧乏は嫌や。もうお金で苦労したくない。だから遺言状を書いてもらうねん。みんなお願いしたら書いてくれた」。女の手練手管で男から大金を吸い上げた手口は、あの木島佳苗被告ともよく似ていますが、木島被告が“お金の向こう側にある羨望されるような暮らし”を求めていたように感じるのに対し、千佐子被告は“金”そのものに魅了されている印象。「あまりに被害者が多すぎて、千佐子被告の記憶もぐちゃぐちゃ、青酸化合物の入手ルートも定かでない」(捜査関係者)ようで、被害者はもっと増える可能性もあるとか。「後妻業」の真の姿が明るみになるのは、まだまだこれからのようです。

 宇野×瀬戸内が「女としての現役」を願い、エイミー×ばななが「早く女を降りたい」と思う。そして「年寄りやからって、馬鹿にしたらアカンで」という千佐子被告。女でいる限り女からは逃れられない。それは年を取れば取るほどに痛感するものなのでしょう。
(西澤千央)

最終更新:2015/04/27 15:50
婦人公論 2015年 4/28 号 [雑誌]
小藪ごときが口出せる、簡単な問題じゃねんだよ!
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