[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」4月14日号

「婦人公論」で大塚家具・久美子社長が語った、父への思いと家族の軋轢

2015/03/28 16:00

 かつて馬術競技を嗜んでいたとか、断食やウォーキングで体重を落としていたとか、後出しがどんどん出てくる村山先生。若く見える女性の「特に何もしてないけど……」のからくりが、こんなところに! 若く見える人の特徴としてドクターが挙げた「恋愛ですね。常にときめいていること」という言葉に「ええっ! 私が健康なのは、きっとそのおかげです!」と食い気味に反応する先生……。若く美しくある理由は、「恋」「ときめき」。その紋所出されたら、なにも言えねぇし!! 宇野先生、寂聴先生、そして村山先生。恋愛を体内に取り込んで自家発電を続ける女たちの深い業をまざまざと見せつけられ、正直若干ゲップ出そうな企画でした……。 

■misonoスタイルに翻弄される大企業

 このところ「婦人公論」で密かなブームと言えば、父と娘の複雑な関係。石田純一とすみれ、やしきたかじんと長女ときて、今回は今最も旬なお家騒動渦中の人、大塚家具の大塚久美子代表取締役社長が登場です。題して「父には、私の一番の理解者でいてほしいのに」。

 大塚家具は、創始者であり現会長の勝久氏と久美子氏が経営方針を巡って対立し、経営権を巡って喧々諤々の争いをしていると報じられています。従来の高価格商品の接客重視路線を推す父と、低価格でフランクに立ち寄れる店づくりを目指す娘。まさにジェネレーションギャップの雛形のように報道されていますが、実際はそんな単純な図式ではないようです。

 一橋大学卒業、富士銀行入社とエリート街道を歩んできた久美子氏が、大塚家具に入社したのは94年。「長男で2歳下の弟(勝之氏)が大塚に入社するタイミング」と同じで、それは「『父親が創業した会社に長男が入る』っていかにも衝突しそうなパターンじゃないですか。それを危惧した母に、私は半ば強引に入社するよう説得されたのです。まあ、緩衝材のような役割を期待されたのだと思います」。04年に一度退社し、自らコンサルティング会社を立ち上げ、07年からは別の会社の取締役にも就任。

 しかし再び久美子氏は大塚家具に呼び戻されます。それはインサイダー取引と認定される不祥事を起こした父親が「引退」を口にしたため。しかしこれが今に至る騒動の発端。あとは任せると言った父親が「引退するのやっぱや~めた」と言い出し、それからは父と娘が代わる代わる社長を務めるという混乱状態に。引退をほのめかし、撤回する……お父さん、まさかのmisono戦法!

 久美子氏のインタビューを読むと、封建的なやり方に終始し、いつまでも“オレの会社”という考えから抜け出せない父親に対し、外の世界に触れた娘が上場企業としての立場を理解させようと必死になっている様子がよくわかります。久美子氏はおそらく大塚家具に執着せずとも、自分で自分の道を切り拓いていけるのでしょう。しかし会社には多くの社員がいて、社員には家族がいる。だからこそ「スーパーマン的な創業者が、手足となる人間を使って会社を動かすという経営からも、脱皮が必要です。“カリスマ”が倒れたとたんに散り散りになってしまうような状況ではいけない」と危機感を覚えているのではないでしょうか。

 切ないのは、久美子氏の願いが「父のやってきたことを守りたい」ということ。そこには人生のすべてを大塚家具に捧げてきた父親と、そんな父親を幼い頃から見てきた娘の切っても切れない情がある。一代で会社を築いた父親からすれば、小難しい理論やデータを並べて経営に取り組む娘が、ただただ「自分のやり方に反抗している」という風に映ってしまうのかもしれませんが……。うっすらと滲むジェンダー的軋轢。優秀な娘の苦悩は、どんな決着を迎えるのでしょうか。そしてここまで一切話題にもならない、長男(久美子氏いわく「きょうだいの中で唯一、「父方」についている弟」)、なにやってるの?
(西澤千央)

最終更新:2015/03/28 16:00
婦人公論 2015年 4/14 号 [雑誌]
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