「バー志麻子」潜入レポート

「私の持ちネタ全部出すよ! テレビで出せないやつ中心に」岩井志麻子のスベらない話

2015/01/06 17:00
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子猫を片手にカウンターのTENGAを愛おしそうに撫でる

 しかしながら元スタッフ・レイラ嬢の話はいつ聞いても衝撃的。「今思えば、おかしいことが多かった」と遠い目の志麻子先生が語る。「社長の愛人だとか、とある有名文化人に『君にニューヨークをあげるよ』って言われて、空港の滑走路にキャンドルがバーっと敷き詰めてあったとか、そもそも消防法どうなってるんだっていう話なんだけど」。レイラ嬢の話をなぜかあっさり信じていたという志麻子先生。しかし、「請求書っていうものを知らなかったの、彼女。それから徐々に彼女の過去が明らかになっていって……。まぁ私としてはちゃんと仕事してくれたらどんな過去持っていてもいいんだけどね」。

 話をしながらカウンターの男性客が何やらググっている。おお……インターネットの恐ろしさ。「そうそう、レイラ嬢今占い師やってるのよ。ブログもやってるよ。知人の作家先生たちが『風俗嬢で体を売って、志麻子先生のスタッフで心を売って、占い師で魂を売って……もう売るものないな』って言ってましたよ」。濃い人には濃い人が近寄ってくるものなのか。ただここで志麻子先生がつぶやいた一言が興味深い。

「うちの息子にも色目使って『うちの息子のムスコに何しとんじゃ!』って激怒して別れたけど、彼女のこと嫌いかと言えばそうではないんだよね。たぶん本当に嫌いな人のことはネタにできない。話もしたくないから」

 残酷なまでの作家的興味が渦巻く志麻子のスベらない話。先生が血反吐はきながら昇華させたネタを、ハイボール片手に聞くというこの時間に感謝した。

「アンタら初体験はショボい方がいいよ~。最初に良い目に会ってもセックス人生は長いからね」

 名言至言がこぼれまくっていたバー志麻子。志麻子先生の尽きないトークと客たちの笑い声で師走の夜はあっという間に更けていった。
(西澤千央)

最終更新:2015/01/06 21:01
『現代百物語 彼岸 (角川ホラー文庫)』
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