深澤真紀の「うまないうーまん」第21回

いまは“多様な女性の生き方”の過渡期、現状を悲観せず生きやすい道を選ぼう

2014/12/22 22:00

 「『未婚女性も父子家庭も、差別される理由はない』という当たり前の概念が通用しない社会」では、東京都議会で、みんなの党・塩村文夏議員が妊娠や出産に悩む女性への支援策について質問していた際に、「自分が早く結婚したらいいじゃないか」などのヤジが飛んだ問題で、差別発言を受けた側である塩村議員の態度や過去への言及までされた問題で、「どんな過去でも差別を受けていいということはない」こと、「差別を持つ」という考えを変えることはできないが「建前とルールとしての人権を守る」ことがまずは大事だ、と書いた。その後も政治の場で女性をめぐる問題発言は続いているのである。

 「夫婦が家事を分担するには、『丁寧に暮らす』ことを捨て『効率』を優先すべし!」では、和光大学教授の竹信三恵子さんが女性に家事育児介護などが押し付けられているという問題を「家事ハラ」と名付けたのに、「へーベルハウス」で有名な旭化成ホームズが「妻の家事ハラ白書」という調査で、“夫のする家事に苦情を言う妻の行為”を「家事ハラ」と呼んで、抗議を受け謝罪をした件から、家事については、女性の多くが持っている「丁寧に暮らす」幻想についても問題提起した。

 「女性議員の女性差別やセクハラで見つめ直したい、『女性の多様化』の意味」では、第二次安倍内閣で過去最多の5人の女性閣僚が誕生し、安倍内閣は「女性活躍」を謳っていても、これらの女性閣僚たちの多くが「女性差別」思想の持ち主ではないかと言われた件と、「週刊文春」で露見した、橋本聖子議員が高橋大輔選手にキスしたセクハラ問題について問題提起した。

 その後、政治資金をめぐる問題で小渕優子前経産相が、選挙区で「うちわ」を配布していたとする問題で松島みどり前法相が辞任して、女性活躍が失速したと言われ、実際に今回の衆議院選挙では、女性候補も女性当選者も目立つことはなかったのである。

 「バチカンが同性愛肯定へ……『伝統』を疑い、新しい家族像を考えよう」では、カトリック教会の総本山であるローマ法王庁が、家族のあり方に関する教義を見直す「世界代表司教会議」を開き、事実婚カップル、離婚、再婚、同性愛などについて、今までよりも肯定的に捉えるべきだという報告書を出した。

 その後、同性愛者や離婚した信者への「寛容姿勢」を求める表現が削除され、カトリック教会の基本姿勢を維持する内容とはなったのだが、世界的にこの流れは止められないだろう。

この連載で採り上げた問題以外にも、最近では、白人ナンパ師の日本人女性蔑視問題や、矢口真里の復帰や、ろくでなし子さんの再逮捕と北原みのりさんの逮捕などの、女性にまつわるニュースが話題になっている。これらの問題に共通しているのは、女性が自分の身体や性に対する決定権をもっていない、あるいは男たちがそれを許さない(ナンパすれば断れない、女が不倫するのは許せない、女性器を女性が売り物にするな)ということだと思う。

 とはいえ、戦後になるまで女性には参政権もなく、そして80年代に男女雇用機会均等法が施行され、働き方の選択肢が増え、私たちは女性の歴史上では、最もましな時代を生きているのも事実である。いまは多様な女性の生き方がうまれる過渡期なのであり、過剰に悲観視しなくてもいいと思う。

 個人個人の女性が、うむ・うまないだけではなく、さまざまな生き方を選んでいけば、女性だけでなく男性の生き方も変わっていけることにつながるのだと思うのだ。

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・淑徳大学客員教授。2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の水曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく:“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)、『日本の女は、100年たっても面白い。』(ベストセラーズ)

最終更新:2019/05/17 20:06
日本の女は、100年たっても面白い。
先輩たちに感謝しつつ、自分の道を歩くことが誰かの道につながると信じて
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