イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

『花子とアン』『Nのために』――暗い陰を持つ少年像がハマる、窪田正孝のポテンシャル

2014/11/27 21:00
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『Nのために』(TBS系)公式サイトより

 TBS系の金曜ドラマで放送中の『Nのために』は、湊かなえのミステリー小説をドラマ化したものだ。2004年、とあるタワーマンションで殺人事件が起こる。殺されたのは大手商社に務めるエリート・野口貴弘(徳井義実)とその妻・奈央子(小西真奈美)。現場に居合わせたのは野口家と交流のあった杉下希美(榮倉奈々)、安藤望(賀来賢人)、西崎真人(小出恵介)。そして、希美の幼なじみの成瀬慎司(窪田正孝)。

 事件に関わる登場人物全員の、苗字か名前のイニシャルがNとなっていて、誰がどのような動機で野口を殺したのかが、ミステリーとしての“引き”となっている。パズル的な構成で多視点群像劇として進んでいく小説に対し、ドラマ版は希美が幼少期から高校時代まで過ごした離島での物語を、導入部として丁寧に描く。

 香川県青景島で生まれた希美は幸せに暮らしていた。しかし突然、父親が愛人を家に連れてきてことで家を追い出され、母と弟の3人で貧乏暮らしを強いられる。母親の早苗(山本未來)は追い出されたことで精神が不安定になり、買い物依存症に……。そんな母のせいで、希美は過酷な暮らしを強いられることになる。この早苗の毒母ぶりが実にすさまじく、不快な描写のオンパレードで、見世物小屋的に引っ張っていく展開は、序盤のうまい掴みとなっていた。

 TBSの金曜ドラマでは、長編ミステリー小説のドラマ化は定番路線となっていて、エポック・メイキングとなったのは東野圭吾・原作の『白夜行』だろう。『白夜行』はドラマ化するにあたって、謎の多い主人公を幼少期から丁寧に描くことでヒューマンドラマに書き換えた。また、物語をわかりやすく整理するために、事件を追う警察の視点を配置する手法も取っていた。また、後に事件を起こす犯人たちがどれだけ過酷な状況にいたのかを描くことで感動を誘うという手法は、『流星の絆』や『家族狩り』にも引き継がれており、それら今までTBSのミステリードラマが培ってきたテクニックが、『Nのために』に総動員されている。

 脚本は奥寺佐渡子。細田守のアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』や角田光代の小説を映画化した『八日目の蝉』等を手がけた脚本家で、『Nのために』と同じ、湊かなえ原作の『夜行観覧車』(同)の脚本も執筆している。しかし、『夜行観覧車』は作中の時間が過去と現在を行き来する構成があまりにごちゃごちゃしすぎていて、さらに露悪的な人間描写に力を注ぎすぎたためか、最後まで楽しめなかった。その傾向は『Nのために』にも残っているが、青春ドラマに寄せることで、ストレスなく楽しめるものとなっている。

 特に、希美が大学生となって、東京のアパートで一人暮らしを始めて以降、物語のトーンは俄然柔らかくなる。同じアパートの住人である安藤望と西崎真人という青年に囲まれるイケメンドラマへと様変わりするのだ。一方、希美の親友だった成瀬は、父の死をきっかけに内面が不安定になる。やがてオレオレ詐欺に関わるようになり、大学をドロップアウトしてしまう。

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