[女性誌速攻レビュー]「DRESS」10月号

結婚、妊娠・出産が基準? 女を置いてけぼりにする、「DRESS」女の賞味期限問題

2014/09/13 16:00

 でも、それって、「女は子どもを産む機械」と発言してバッシングを受けた議員と姿勢は何ら変わらないような……。だって、女の賞味期限に結婚や妊娠や出産を絡めるということは、その能力を失うことは賞味期限切れ……つまり女としての価値がなくなったと考えたわけでしょう? 

 もう1つの違和感は、甘糟さんにしろ、ジェーンさんにしろ、お2人は賞味期限があるとかないとか、念頭に置いて生きているのでしょうか。本文でジェーンさんは「女の賞味期限ってなんでしょうね? 誰にとっての賞味期限なんでしょうね?」と、その存在自体を疑問視する発言をしていますし、甘糟さんは「“女子”の賞味期限は短いけれど“女”の賞味期限はなし!ってことで…」と、やっぱり否定的。これは世間の目はどうあれ、女が自分自身について、賞味期限云々なんて考えていないということなのでは。

 40代は、女としての機能が少しずつ失われてバランスを崩す不安定な時期です。「老い」の階段を下っていることを意識して、死を意識する時期でもあります。そういう、「女としての能力」と、「賞味期限」を結びつけて考えるのなら、加齢によって男性がEDになったら「賞味期限が切れた」と表現するのでしょうか。聞いたことがありません。こう考えても、“女の賞味期限”議論は、やはり非常に差別的な、男性的な発想だということがわかります。

 結局、対談でも「自分が男にとって美味しく味わっていただけるかどうかは、相手の好み次第」という結論で、一体この問題は、なんだったんだろういう企画でした。そんな細かいこと(賞味期限と言うからには男性の視線とか?)考えていないで、毎日楽しく生き生き生きてればいいんじゃない? と、思ったのでした。

■DRESSな女のひとり旅はまるで……

 ほかにも今月号では「私を変える『運命のひとり旅』へ、いざ!」が気になりました。これは、眞鍋かをりをはじめとした7人の“DRESSな女”がひとり旅をして、その報告をするという企画です。行き先は、グアム、ウラジオストック、台湾、高野山、市原市、礼文島、ニューヨークとバラエティ豊かです。ひとり旅に行ったメンバーのプロフィールを見ると全員「DRESS」編集者やライター、モデルなので、“慰安旅行ひとり旅編”って感じでしょうか。高野山に訪れたエディターは、「当初は『高級スパのホテルで疲れを取ってデトックスしたかったわ~』などと思っていたが、高野山に行ってみて、結果よっぽどデトックスできた」と書いているので、行き先は自分で選べず、編集部からのオーダーだったらしいことからも、やっぱり慰安旅行ですね。

 誌面には「写真はすべて××と旅で出会った人が撮影しました」としつこく書いてあって、もともとひとり旅派の筆者は、「ひとり旅じゃないかもなんて疑ってないってば」と、突っ込みたくなりました。ていうか、そもそも慰安旅行なのだしね。「ほんとにひとりで行って来ました!」とか、「コンビニにひとりで買い物に行くのも苦手なほど寂しがり屋が人生初のひとり旅を実行!」とか書いてあって、なんだか「はじめてのおつかい」みたいだなと思いました。

 旅行者本人が撮影しているからか、旅にグルメは必須だからか、やたら食べ物のショットが多くて、Facebookの投稿が雑誌に載っているようなデジャブ感。こうなると、「ひとり旅しちゃった素敵な私」を投稿する慰安旅行企画です。

 一方で賞味期限についてあれこれ話し合い、一方でははじめてのおつかい状態。始まったばかりなのにもう終わる話をしているなんて、女の人生はなんと短いのでしょうか。
(増井涼子)

最終更新:2014/09/13 16:00
『DRESS(ドレス)2014年 10月号 [雑誌]』
表紙の「流行通信」「GINZA」二番煎じ感はどうなの?
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