“モテ”から読み解く女性誌カルチャー【前編】

「モテに翻弄され続けた世代」20代後半女性の“女性誌カルチャー”と“くすぶり”の遍歴

2014/09/06 19:00
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【左】「KERA」2014年10月号(ジャック・メディア)【右】「Seventeen」2014年10月号(集英社)

 「コギャル」「オリーブ少女」「お姉系」「渋原系」など、当時の10~20代の女性が中心になって巻き起こった数々のブームは女性ファッション誌から生まれた。若い頃、自らの世代が作り上げたブームは、年を経てもファッションの礎になるものだ。しかし現在、20代後半の世代には「何を着ればいいのかわからない」女性が少なくないという。それはすなわち、「独自のファッションを代弁する女性誌がない」ということなのではないだろうか。20代後半の世代を「“モテ”という概念に翻弄され続けた世代」と語る、1986年生まれのライター・北条かや氏に、彼女たちの歩んできた女性誌とファッションの変遷を、“モテ”というキーワードを軸に読み解いてもらった。そこに見えてくる、20代後半の女性の姿とは――?

 最近、「着る服がない!」と悩むことが増えました。86年生まれで今年28歳の私は、「ファッションの自由」を求めて試行錯誤しています。お店で可愛いワンピを見つけても、「アラサーには、ちょっとフリフリすぎない?」と遠慮してしまいます。一方で、年相応の格好をしようと「コンサバ系」のファッション誌を読んでみても、「こんなデキるOL風の服、着られるか!」……。とにかく、着る服がないのです。周囲の友人・知人に聞いてみると、同じような悩みを抱えるアラサー女子は意外と多い。昔はもっと自由に、着たい服を着ていたし、「ファッションでの自己表現」に迷いがなかったのに……どうして今はそれができないのでしょう。

 上の世代を見てみると、現アラフィフの女性たちは「JJ」(光文社)と共に女子大生ファッションを生み出しました。アラフォー世代の一部は「オリーブ少女」となって、日本にいながらパリのリセエンヌ気分を味わう術を身につけた。その少し下、現在35歳くらいの女性たちは、紛れもなく「コギャル」の先駆者です。大人たちから非難されつつも、自分たちでカルチャーを生み出しました。さらにその少し下、現在32~33歳の世代は、エビちゃんブームの当事者です。巻き髪にマーメイドスカート、ツインニットにプチネックレス。「これぞモテの王道!」と、ミュールをカタカタ言わせて街を闊歩するお姉さんたちに、ちょっと反発を覚えた、20代後半(85~88年生まれくらい)の女性たち。でもその頃、私たちは何をしていたんだろう。よくよく思い出してみると、「女性誌」というものを通して、私たちの「ファッションのルーツ」が見えてきました。

■「Seventeen」に共感できなかった女子たち

 現アラサー女性の多くは、おしゃれに目覚めた思春期、それなりに流行のファッションに身を包み、それなりにそのファッションに満足していました。90年代後半から2003年にかけての中学時代は、ローティーン誌「ニコラ」(新潮社)の黎明期。中1で「ニコラ」を卒業したら「Seventeen」(集英社)のお姉さん系ファッションへ移行する女子が多数派でした。また、最初から雑誌なんて読まずに、当時流行していたZEEBRAやDragon AshみたいなB系風ファッションで群れるギャルも結構いたように思います(地方のヤンキーギャルは、このタイプが多かった)。

 「Seventeen」には、いかにも男子が好きそうな、お姉さんっぽくてちょっとセクシーな服がたくさん載っていました。それを着ることが許されるのは、可愛い子かギャルと私の周辺では決まっていました。爽やかなイケメン男子を狙う女子は「Seventeen」を読み、強めのヤンキー男子を狙う女子はB系ギャルに。どちらも、自分が好きなタイプの男子にモテる服を選んでいたのです。

『KERA 2014年 10月号』
モテるかモテないか、2つしか道がなかったのが女子を苦しめた?
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