深澤真紀の「うまないうーまん」第18回

夫婦が家事を分担するには、「丁寧に暮らす」ことを捨て「効率」を優先すべし!

2014/08/28 22:45

 それでも、実際に「自分の家事に文句をつけられ、やる気をなくした」という夫も多いかもしれない。子どもの手伝いではないので、「文句をつけられたからやらない」は通らないとは思うが、一方ではよく女性が口にする「夫を教育する」という表現もあまりよくないとは私自身は思う。

 例えば、共働き子なし夫婦の我が家は、夫も私も家事を同じくらい分担しているが、それぞれに得意な家事・不得意な家事があり、またそれぞれ家事に一家言がある。そのため夫も私も「お互いの洗濯物の干し方が気に入らない」などの不満があるのだが、それに文句をつけてもはじまらないので、「洗濯ができていればいい」ことを優先する。“洗い方や干し方に気をつけるべき洋服”などはそれぞれ別のカゴに入れているので、時間がある時に自分で洗って干すようにすればいいだけだ。

 ちなみに夫婦が2人で同程度のレベルで家事をすると、家事のこだわりやスタイルが違うので、嫁姑のような家事の確執が起こってきてしまうこともある。我が家ではそこは割り切って、食器洗剤などもお互いの好きなブランドをそれぞれ使ったりしている。夫婦で違うブランドのシャンプーを使うことと同じようなことだ。どちらかに合わせる(とくに妻側を優先すること)のは、揉めるもとだからだ。

 とにかく私としては、夫に「妻の家事を教育する」と言われたら腹が立つので、私も夫の家事を教育しようとは思わない。もちろん家事能力が低い夫は多い。しかしそこで「教育」と上から目線で接していたら、夫の家事はいつまでもお手伝いのままである。

 私は、家庭も会社と同じように「家庭法人」と考えるようにしている。それぞれの家庭で、まずは家事の得意な妻が合理的なマニュアル(家事の目的をはっきりさせることが大事で、その過程にこだわらない)を作成し、その範囲内で夫が自分なりに家事を主体的に構築すればよいと思うのだ。「自分に任せられた仕事」だと思えば、効率的にこなせる男性は多いはずだ。

 それに、男性が自分で家事をできるようにすることは、自分の人生の選択肢を増やすためには重要なことであり、男性自身のためになるからだ(女性が自分で稼ぐことも同様である)。

 また女性自身が「きちんと家事をしなければいけない」という呪いにもかかっているように思う。いわゆる「丁寧に暮らす」という言葉を聞いて、「そうしたい」と思う女性は多いだろう。夫婦2人ともが忙しい我が家では、むしろ「丁寧に暮らさない」ことで、日常を回している。

・洋服は洗濯機で洗えてシワにならずアイロンが不要なものを選ぶようにする
・梅雨時などのために下着などは10日分くらい用意
・掃除はクイックルワイパーとコロコロとコードレス掃除機で適当に
・食器は食洗機で洗えるもの
・電子レンジ用の調理器具なども活用
・総菜や外食も活用

 などと、「丁寧さ」よりも「家事の効率」を優先するほうが、お互い気が楽だからである。

 それぞれの家庭がそれぞれの形で家事をすればよいのであって、家事に正解はないと思うが、妻は「きちんと家事をしなければいけない」、夫は「家事をしたら文句をつけられる」と追い詰められてしまっては、お互いが不幸なだけだと思うのだ。

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・淑徳大学客員教授。2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の水曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく:“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)、『日本の女は、100年たっても面白い。』(ベストセラーズ)など。
※和光大学教授の竹信三恵子氏との『「家事ハラ」炎上! 女たちは何に怒っているのか』トークショーも開催。詳細はこちら。

最終更新:2019/05/17 20:07
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